タグ:BOOKS ( 179 ) タグの人気記事

2018年 08月 05日
夏休み(だったような)
e0134713_0544124.jpg
一週間の旅行から帰ってきて、夏休みって素敵だなあ、まだまだ休みは残ってるから何でもできちゃうなあ、と思っていたはずなのに、どういう訳か気づいたらもう休みが終わろうとしている。ちょっと昼寝している間に更に一週間ほど経ってしまったとしか思えない。不思議な現象だ。

で、慌てて、「夏休みが昼寝の夢ではなかった証拠に何か痕跡を残しておかねば……」とオロオロと部屋の模様替えをした。リビングの片隅に勉強机を移設して、こぢんまりしたデスク・スベースを作る。年々暑くなっている気がする日本の夏、子供らに子供部屋で熱中症になられても怖いからな(特によそのお子たち……)。子供たちよ、我が家で唯一エアコンのあるリビングで思う存分夏休みの宿題をするが良い!これで図書館やプールやフードコートを渡り歩かなくってもOKだ。(渡り歩いてもOKだ)

夏休みの終わりを迎えつつある母から子へ残す言葉はたった一つ、「長いと思っても休みは一瞬、夢幻の如くなり」。神妙な顔で頷く子供。まだ宿題はほとんどしてない模様。この後、べそをかきながら仕事の宿題を片付ける母の姿を見て、早めに何かの教訓を得てくれればと思う。

* * * * * * * * * * * * * * * * *

夏休み、なんとも楽しかったなあ……という感覚だけ残して、その実体は夢のように朧げ。とても不思議なことです。

『仙人の壺』(南伸坊)

不条理・不思議な中国の志怪談を、現代風にまとめず、そのまんまの雰囲気の漫画&エッセイで紹介していて凄く面白い。続編は『李白の月』。

古代中国に限らず、別の時代・別の文化の小話や土着の民話とかって、「えっ、どういうこと?」ってびっくりするような落ち着かないようなものが多くて面白いと思う。

家と職場だけ行き来してると、ついつい人間の基本的な情動や思考の枠組は今も昔もどこの国でもそう変わらなくて「話せば分かる、話さなくても分かる」くらいに簡単に思って、同じ論理や倫理などを前提に想定してしまうことが多いけど、実は時空の隔たりに比例して、それぞれかなりぎょっとするくらい異質な部分も多いのだと思う。

ちなみに北米の話ってそういう驚きの感覚が少ない気がする。で、戦後からこっちアメリカの影響って凄く大きいんだなーと思ったり。国が若いってのもあるかな。


[PR]

by macchi73 | 2018-08-05 23:55 | 面白かった本など | Comments(0)
2018年 07月 12日
人の目を通した景色(江上茂雄:風景日記@吉祥寺美術館)
e0134713_22152568.jpg
毎朝通勤時に通る角の生垣の葉が、虫食い一つなくてすごく綺麗だ。(自分の虫食い庭を恥じる)

みんな同じきちんと端正な形をして、でも思い思いに色んな角度で生垣を覆って、葉っぱ一枚一枚が中心から縁への滑らかなグラデーションを描きながら、さらに生垣全体でも大きな緑の塊を作っている。これって、こってりしたクレヨンか油絵にしたら面白いよなあ……写真撮りたいなあ……と迷って、でも他人の家の前を撮影するのも怪し過ぎるので、毎日立ち止まってしばらく眺めてる(←写真とらなくても充分怪しい)。だけど仕事から帰るといつも夜中でクタクタで、朝の感じは消えかけてる。

あーあ、つまんね、こうやってるうちにいつも綺麗なものは終わっちゃうんだ、とか思ってたら、古紙の束の上に置かれた自治体の広報誌に小さく載った絵が目に止まって、アッと思った。そうそう、ちょうどこんな感じ!


記事を読んだら、江上茂雄という人の絵で、近所の美術館で週末までやってる企画展らしい。それで、週末に散歩がてら見てきたら面白かった。画集が売り切れで買えなかったのが残念だ。

隣の展示室で見られた浜口陽三も、シーンと静かな銅版画が不思議な感じで面白いと思う。


『浜口陽三展図録~静謐なときを刻むメゾチントの巨匠』

夏が一番好きな季節のせいか、モワッとした空気の中を歩き回ってるとすぐに風景に見とれてぼーっとしてしまう。ちょっとしたものでも信じられないくらい綺麗で驚いてばかりだ。なのに写真ではなかなかその感覚が保存できない。

思うに、たぶん綺麗な景色っていうのは光の反射だけで成るものじゃなく、見る側の内にある五感のごった煮も投影して認識されるものなんだと思う。だから光学的に正確にその場を写しとった写真より、描き手の五感フィルターを通して歪んだり霞んだり省略されたりした絵の方が、綺麗なものを見た時の感覚が想起しやすいのかも。

* * * * * * * * * * * * * * * *

目でみると綺麗なのに・写真に撮ると汚いものの代表、それは我が家の庭。
うーん、不思議だなー。

しかし一つ言っておきたいのは(誰に?)、写真的には荒れ果ててるようにしかみえないけど、いつも風で揺れて光が動いてて・四季折々の良い匂いつきなんだ。そして昔この場所で見た、虫や子や鳥や人々の残像つき、残響つきでもある。(私にとっては)
e0134713_22333167.jpg

[PR]

by macchi73 | 2018-07-12 06:00 | 面白かった本など | Comments(0)
2018年 07月 04日
焼き付く細部
e0134713_0142535.jpg

皮膚の内側と外側が同じくらいの温度で頭がぼんやりする。暑すぎるせいか蚊もいないのは快適で、庭をぶらぶら見てまわる。花の上でピカピカ光るハムシだけ、割と元気なようだった。光線と一緒に熱も反射するのか?

覗き込んだら、翅が青く光ってるのか・黒い翅に空が映って青に見えるだけなのか、すぐには判別できなかった。そしたら急に、子供が3,4才の頃、池のほとりで麦わら帽をかぶって、ほほーと空を見上げていた様子がくっきり蘇った。その時、ピカピカの黒目に空が映ってるのに気づいて、黒いけど青空だな、おもしろい、って思ったのだった。
e0134713_0141764.jpg
暑くて台所で火を使いたくないので、家にいる家族とランチに出た。

食事を終えて炎天下の移動中、気持ち良い場所を見つけた。

ベッドみたいなソファーがポツンと二組だけ置かれた人気の無いテラスで、空が広い。寝そべって、熱い風に吹かれながら氷入りのドリンクを飲んでボーッとした。隣で娘たちがペチャクチャ喋ってる。末っ子は長女の体の上に足を伸ばして、寛いだ姿勢。時々思い出したようにこっちを見て、「もうそろそろ帰る?」と聞いてくるけど、隣の一人掛けソファでトカゲみたいにのびてる夫が「ううー、もう少し」と唸ると、またペチャクチャ喋り出す。その繰り返しで、ずいぶん長いこと日光浴した。

日差しが眩しくて、目を閉じていても何か白っぽい。
疎らに置かれた観葉樹の葉の陰に見える向こうのソファでは、若い女の子達が向かい合って体をゆるっと沿わせ、足を気怠そうに投げ出している。近くには脱ぎ捨てたサンダルが散らばって、つるんとした足の裏が目に焼きついた。女子供の寛ぎ方って物凄い。無関心で柔らかくて重そうな猫みたい。

それで戻ってからすぐ目に残る足の裏を走り描きして、谷崎潤一郎を読みまくった。その場で描いちゃうと、盗撮的な何かになるのかななんて思ったりして。


『卍』(谷崎潤一郎)


谷崎潤一郎は「俺はこれで行くもんね」という我が道を行く肝の太い感じが好きだ。

これは四人の男女が出てくる話。
一文字で物語の骨子を表していて、しかも迫力のある良いタイトルだと思う。


[PR]

by macchi73 | 2018-07-04 06:30 | 面白かった本など | Comments(4)
2018年 06月 19日
父の日の庭料理
e0134713_23151769.jpg
↑↑ 三尺バーベナ上のキマダラセセリ ↑↑

父の日のある週末、子供たちが全く動く気配を見せないので、ちょっと夫を不憫に思ってチヤホヤした。私は夫の子供じゃないけど、かわりに父の日の美味しいご飯をたくさん作ってやろう。こないだの母の日、私だけ子供達からチヤホヤされちゃったからな。ふ。

そうして日が暮れて・日曜の夜中になって、「これはやはり忘れ去られているな」と確定したと思われたところで、そっと夫の肩に手を置き、いやーなんか私だけ悪いね、やはり子にとってはいつも家にいる父より不在気味でも母という面もあるのだろうかねえ……とトンデモナイ偏見に満ち満ちた嫌な笑顔で慰めようとしたら、日付も変わるかなというその瞬間、ドタドタと帰宅した大学生の息子から夫に、綺麗にラッピングされたコーヒーメーカーが贈られた。ちっ、ガッデム!!(ってこた無いか)

それですっかり日付が変わってから、夫婦でコーヒーを飲んだ。

母の日は長女が、父の日は長男がとりまとめて子供たち全員の連名で祝うことにしたようだ。なんか段々、そつのない感じになって行くなあ。大人になった子供たちって感じだなあ。素敵なプレゼント貰っておいて何だけど(母の日にもらった財布でQOL上がりまくり)、成長を感じて嬉しいような、寂しいようなだ。変な絵や妙な手作りチケットをくれたりくれなかったりした、テキトーな笑顔の幼い日は遠くなりにけり。
e0134713_23151580.jpg

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

てっきり忘れ去られていると思われた、父の日のための料理いろいろ。

庭に繁るローズマリー、タイム、オレガノ、チャイブなんかを摘んできて、肉を焼いた。それと、最近完全に習得して簡単に作れるようになったブリゼ生地を多めに作って、タルトとキッシュを同時に焼いたりもした。料理してたら末っ子が寄って来て、この間学校で作ったというカレーを隣で作ってくれた。末っ子だけで料理してくれるのって初めてかな。子供の料理、良いもんだ。

このところ、小嶋ルミさんの『パティスリー・サレ』のレシピでおかずを作っているが、「軽い玉ねぎのキッシュ」が今んとこ一番好き。色んなタイプのキッシュに共通するコツも分かって来たので、あともう1,2回作ったら、心のままにアレンジきかせても、いつでも美味しく作れるようになるだろう。もうこの料理は自分のモノにしたなって感じつつある時って、なんか楽しい。
e0134713_23151376.jpg

それと、最近お気に入りのホーロートレイでの料理&デザート。
手抜きっぽいといえば手抜きっぽいが、洗い物が少なくて手軽で気軽……。残ったらそのまま蓋をして冷蔵庫へ、ってのも楽ちん。



[PR]

by macchi73 | 2018-06-19 06:00 | 【庭】収穫、料理 | Comments(0)
2018年 06月 10日
キッシュ・タルトの簡単土台の作り方
e0134713_341259.jpg
結婚記念日に、久しぶりに夫と二人で並んで台所に立って色々とご馳走を作った。楽しい。いつも美味しいご飯ありがとう。

先日はピンとこなかった出来のキッシュだが、小金井市のオーブン・ミトンというお店で食べたキッシュが美味しかったので、そこの店主の小嶋ルミさんの本に載っていたアパレイユを試したら、今度はとっても上手にできた。トロリとした食感を出すには、アパレイユにも粉を使うのがコツっぽい。


『パティスリー・サレ オーブン・ミトンの塩味のお菓子』(小嶋ルミ)


以前ケークサレを作った時に美味しくできたので信頼度が高いレシピ本。

今回は一番シンプルなチーズのキッシュを試してみたが、他にも美味しそうなレシピがいっぱい!

この本のレシピは、さすがお店用という感じで、グラム数が細く厳密で、しかも手順も生地を一旦冷やしてから伸ばしたりと、かなり手間をかけて丁寧な感じ。きっとそれを守ることでお店みたいにめちゃくちゃ美味しくできるってことなんだろうと思う。

が、クッキーみたいなプリゼ生地を土台にしたキッシュを作りながら思ったのは、これは一昨日作ったグレープフルーツのタルトのレシピによく似ている……。で、そちらはかなりお手軽なレシピだったので、両方を適当に合わせて作った、自分が覚えやすいタルト生地のレシピをメモしとく。

【キッシュ・タルトの土台の作り方】

(1)材料は、バター100g、小麦粉150g、卵黄1個。
それと、グラスに人差し指一本分くらいの水を入れて、そこに塩4つまみ、砂糖6つまみを溶かしておく(ひとつまみ0.5g)。
e0134713_3412463.jpg
(2)バターをクリーム状にヘラで練る。
(3)そこに小麦粉をドサッと投入し、細かいそぼろ状になるまで、ヘラで切るように混ぜる。
(4)よく溶いた卵黄を(1)の水・塩・砂糖のグラスに入れて混ぜ、(3)の生地に回し入れる。
(5)さらに切るように混ぜ合わせる。
(6)生地に粉っぽさが無くなったら、パイ型に敷き詰めて、冷凍庫で10〜15分ほど冷やす。
(7)冷えて固まった生地にフォークで穴をあけ、200度のオーブンでほんのり薄く焼き色がつくまで、10〜15分ほど焼く。
e0134713_3445397.jpg

以上で土台は完成。簡単だし、サクサクで美味しい。
この土台の中に、フルーツとフィリングを入れて焼けばフルーツタルトになるし、卵・生クリーム・チーズなんかを入れればキッシュになるという訳。バター:小麦粉の比率は1:1.5で、冷やしたり焼いたりする時間も10〜15分、と覚えればOK。

これから夏の朝食に、いろいろ試してみようと思う。
e0134713_3412126.jpg

[PR]

by macchi73 | 2018-06-10 06:00 | 【庭】収穫、料理 | Comments(5)
2018年 06月 08日
あり余るほどの収穫対策
e0134713_04859100.jpg

ブラックベリーやボイセンベリーの果実が少しずつ色づき始めた。今年はどうかな、豊作かな。

とらぬ狸の皮算用で、「旬の時期にお手頃価格でたくさん手に入る果物や、いただきものでつい余らせてしまうフルーツを使ってつくるお菓子のレシピ集!」なんてキャッチの本を買ってしまった。果たしてはたして、余らせるほどのベリー収穫ができるや否や!?

『やさしい果物のお菓子 すべての手順が写真でわかる10枚レシピ』(飯塚有紀子)

一品につき見開き左右にレシピがまとまっており、全工程に写真がついているので、調理台に開いて手順を確認しながら調理を進めやすい。

写真も分かりやすく綺麗。どれも10工程で作れるレシピなので、初心者でも簡単に作れそうなシンプルなものが多い。



それで早速、本から試しに一つ作ってみた。グレープフルーツのチーズタルト。
e0134713_0485779.jpg

焼いてる途中、お風呂上りの子供が寄ってきて、お母さん何してるの凄く良い匂い!と言う。台所いっぱいにグレープフルーツの香り。

焼き上がった端っこを味見したら、美味しい!主役のグレープフルーツが引き立っている。家にある材料だけで簡単に作れるから、いろんな果物で応用できそうだ。アンズなんかでも美味しそう。
e0134713_0485635.jpg

本には、「焼きたてでも冷やしても美味しい、密閉容器に入れて冷蔵庫で3日間ほど日持ちする」と書いてあったので、焼き型にそのまま蓋をして冷蔵庫へ。翌朝の朝ごはんの一品となった。
e0134713_7561864.jpg
* * * * * * * * * * * *

どれだけ収穫できても問題無いよう、すでに保存の準備はできている。
さあ来い!



野田琺瑯は、オーブン料理してそのまま蓋して保存できて重宝する。
ホーローは直火にもかけられるのが凄く便利なんだけど、電子レンジ利用は不可。


iwakiの耐熱ガラスはオーブンもレンジもOKだが、直火はNG。
透明なので、層を見せたい料理にはこっちを使っている。


e0134713_7572277.jpg
薄めのタルトで、形としてはフロランタンみたい。
タルト台はサクサクホロホロでフィリングはクリーミー。
この美味しさを一言でいうならば……と標語好きの娘。
「『サクッ、ねっとり、ジュワ〜』、いや違うな、『香ばしく、濃厚で、爽やかな味わい』、
夏の果物にぴったりだと思います。明日も作って」

[PR]

by macchi73 | 2018-06-08 06:00 | 【庭】収穫、料理 | Comments(2)
2018年 05月 25日
中に入って来ようとするもの(紋白蝶、堀川櫛鬚大蚊、幽霊)
e0134713_2227257.jpg
日中は家のあらゆる戸が開けっ放しにされる季節到来。いろんなものが家の中に入ってくる。

娘が、台所の窓に向かってひらひらしている白い蝶を見つけて、「鱗粉を傷つけないようにしないとね」と言いながらそっと庭に放す。なんか大柄で、翅もすごく綺麗な紋白蝶だ。最近羽化したばかりの若い蝶かな。

庭に出したら、すぐにもう一頭の蝶が寄って来て、ずっと絡み合うようにしてキャットミントの青い花咲くヤブの中をふわふわ飛び回っていた。そんなことはないと思うけど、まるで仲間が迎えに来たみたいに見えた。
e0134713_2227073.jpg
e0134713_22265814.jpg
奥の部屋ではオレンジ色の虫がぶんぶん言ってる。パッと見、蜂みたいだけど蜂じゃない……。たぶんホリカワクシヒゲガガンボの黒化型かなと思う。
e0134713_222655100.jpg
夫が翅を持って捕まえると、お尻で刺してくるような動きをする(けど刺さない)。窓から逃がして飛び去ってくのを眺めてたら、後ろに何かの気配を感じて、振り返ったら、また別のものがいた。いろんなものが家の中に入ってくる。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

家に入って来ようとするもの繋がりで。


『ねじの回転』(ヘンリー・ジェイムズ)

田舎の貴族の館に隔離されて暮らす幼く美しい兄妹の元に、生真面目な令嬢が家庭教師としてやってくる。そこで彼女(だけ)が目撃する、子供達を堕落させようとする邪悪な亡霊たちの正体とは?過去にこの屋敷で起こった出来事とは何なのか、狂っているのは子供たちか、それとも?

女家庭教師の手紙を朗読する男によって語られた物語を、さらに別の人物が書いている……みたいな構造もあり、この語り部って、もしかしたら登場人物の一人じゃない?なんてことも思いながら読み進んだ(創作オチみたいな感じで、その線も捨てきれない)。登場人物それぞれに意図や不安があって「邪悪」や「堕落」の正体をはっきり言及しないので、色んな解釈が可能で、かなりモヤモヤする。

家庭教師と女中が怖がり同士で、それがちょっと怖い。持ってまわった会話で、お互いに恐怖を増幅しあうみたいな。そのせいか、亡霊騒ぎは家庭教師のヒステリーという解釈もあるようだ(その線も捨てきれない)。
「……子供達は、あの二人のそばへ行きたがっているのよ」
おお、この言葉を聞いて、気の毒なグロースさんは、どんなに目をみはり、しげしげと前方の子供達を凝視(みつ)めたことか!
「でも一体何のために?」
「あの恐ろしい月日の間に、クイントたちが子供らの心につぎ込んだすべての悪徳が恋しくて。そして、またクイントと女とは、いまもなお、子供らをそれらの悪徳に浸み染ませようとして、悪魔の仕事をつづけようとして、舞い戻ってくるのよ」
「まあ!」
わたしの友達は、声をひそめて叫んだ。
今のミステリ読者なら、子供達に与えられた悪徳っていうのはセックス・ドラッグ・ロックンロールみたいなものを想像しちゃいそうだが(その線も捨てきれない)、この物語の中では、もっと曖昧な原初の得体の知れないものが想定されているように感じた。人間は、理性の下で人間らしくあるべきで、自らカオスに近づいてはいけません、みたいな価値観。「文明の光から外れた、得体の知れない怖いもの」という意味では、ゴールディングの『蠅の王』の豚の頭が象徴するものと同類なんだと思う。『蠅の王』も隔離された子供たちと悪の話だし。文明 v.s. 邪悪。すごく西洋っぽい。

でも、もしこれがオカルト抜きの現実だとして子供達の視点になってみれば、ここじゃないところで生きられるようにしてくれる頼りになりそうな大人が周りには誰もいないしさあ。まあ小さい時にそばにあったものに親和性を覚えて維持しようとするのってわかるよ、身分とか善悪じゃないよね、お前そこにいるのかと名前も呼んじゃうよね、と思った。森、湖、夜、亡霊……慣れ親しめば、怖くはないかも。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

もう一冊。呼び入れてはいけないものを、でもどうしても呼び入れてしまうという話。

『青野君に触りたいから死にたい』(椎名うみ)

「うわー、つきあったばかりの彼氏が死んで幽霊になっちゃったよう!」という漫画。設定はありがちっぽいけど、読むと奇妙な独自ワールド全開。

ちょっと下ネタ寄りのラブコメ風味は笑えるはずなのに、なんか細かいとこが狂ってる感じがあって、不穏な雰囲気が消えずにずっと緊迫感がある。特に、得体の知れないものに呼ばれる時の夢の背景が微妙に散らかってたり料理がまずそうだったりで、自分も見たことあるような篭った感じの悪夢なのが、けっこう嫌な感触だ。ヒロインの女の子も可愛いけど怖い。かと思えば、可憐。

既刊3巻。この先が気になる。絶対に長編にはならなさそう(良い意味で)。

[PR]

by macchi73 | 2018-05-25 06:00 | 面白かった本など | Comments(0)
2018年 04月 27日
寄生蜂(コマユバチ、ヒメバチ)
e0134713_217185.jpg
アスチルベの葉裏に、2cmくらいの青虫がいた。

あれ、ちょっと色と動きがおかしいかな?と思ってよく見たら、脇腹に穴があいて、寄生蜂の繭がくっついている。

青虫は、ときどき激しく上半身を振って、苦しそうだ。コマユバチの幼虫は、繭を作る直前に一斉に体外に出てきてるのを見ることが多いけど、今はまだ一つしか繭が見られないから、このあと続けて何匹かが出てくるところなのかもしれない。全部の幼虫が体外に出てきて繭になり終わる頃、青虫の方は死んでしまう。
e0134713_2165919.jpg
その頃、庭のいろんな場所では、寄生蜂の姿もたくさん見かけた。

触覚の中頃が白いこの蜂は、ヒメバチの一種かな。しきりに触覚を震わせて、葉の表面を触覚で小刻みに叩くドラミングと呼ばれる動作をしながら、いろんな葉の上をじっくり探索していた。寄生蜂が宿主になるアオムシたちを探し出す方法は、葉っぱの上に残されたアオムシたちの食害痕を追跡するというので、多分このハチも宿主の形跡を探し中なんだと思われた。
e0134713_2165839.jpg

近くには、黒いヒメバチと全く同じ動作をしながら、葉っぱの上を探し回ってるオレンジ色のハチもいた。すぐに飛んで行っちゃったので、どんなハチかは確認できなかったんだけど、触覚で葉の表面を叩きながら移動する様子からして、やっぱり卵を寄生させるための宿主を探していたんだと思う。アオムシはたいてい葉の裏側に隠れていることが多いが、こんなのがいっぱい飛び回ってるんじゃ、安心できないだろうな。
e0134713_2165649.jpg
ちなみに、アオムシに寄生するコマユバチたちも、さらにもっと小型の別の寄生蜂たちに狙われている。こういうのを二次寄生とか、高次寄生というようだ。自然の中では狙ったり狙われたり、無事に大人になって繁殖するのって、大変なことだ。

* * * * * * * * * * * * *

ミステリと寄生虫のまさかの組み合わせ。
すごく怖いので、怖いもの好き・虫好きな人だけ読むと良いと思う。
虫好きなら、あー!あるね、あるね、そういう虫いるもんね!って思う。





[PR]

by macchi73 | 2018-04-27 06:30 | 【生物】昆虫・その他の生物 | Comments(3)
2018年 04月 08日
熟年サイクリング
e0134713_1203459.jpg

土曜の夜の仕事帰り、家に電話したら非常に珍しいことに家族全員が揃っていたのでフレンチに誘ったら全員が「行くー!」と二つ返事。忙しい大学生たちが揃うのは珍しいことだ。子供達全員、よく笑いよく喋りよく食べる。そういう様子を見てるのが楽しいっていうの、何か親的な心境なんだろうか。でも来年くらいには上の子たちはもう家にいないのか……末っ子が寂しがるだろうな。

なんかしんみりして、翌日はサイクリングに誘ってみた。小さい頃からいつも家族でサイクリングして、色んなところ行っただろう?

えーと、サイクリングは結構です……と全子供連からの即答。そしてそれぞれがそれぞれの用事をするということで散って行った。ちぇ。街遊びには喰いついてくるくせによう。

仕方ないので大人二人でサイクリングした。面白そうな場所見つけたんだ、子供無しならサックリ飛ばして帰って来れるし坂道あるよ!と夫だけが嬉しそう。
e0134713_120323.png

それで、柳瀬川〜空堀川というところに行って来た。
川沿いの気楽な道で、短いが凄い急勾配の坂もあって崖からの見晴らしも良い。子どもたちと出かける時は色んな場所で停まっては遊び、停まっては遊びだったけど、大人二人ならスイスイ進む。人の世話しなくて良いって楽ちんだ。でも楽ちん過ぎて、なんか拍子抜け。

のどかな風景を味わって、途中の喫茶店なんかも結構良くて、あー子供も来れば喜んだろうになあ、と思う(いや、もうそうでもないのか……)。

そして夜。道中で見つけた動植物の写真をブログにアップしとくか……とPCに向かってふと思うに、「子どもとおでかけ」タグは「夫とおでかけ」に変えられるべき時期が来たのかもしれない。何とも言えない気分。
e0134713_12030100.jpg

* * * * * * * * * * * * * * * * *

今後の子どもとのお出かけは、物理世界ではなく趣味世界でのことにシフトしていくのかもしれないな。

面白くてちょっと珍しいファンタジー無いかな?と末っ子に聞かれて、これはと思う本を水先案内する。設定は吉田戦車のほのぼの漫画『おかゆネコ』(これも面白い)と同じなのに、ハラハラドキドキ感が物凄いんだ。きっと気に入ると思う。

『天才ネコモーリスとその仲間たち』(テリー・プラチェット)

作者は、たぶん読者の子供たちにこの世界でうまく生きる処世術を伝えようという意図を持って書いていると思う。だけどそれが前面に出てウルサくならない、絶妙のラインをキープしていて好ましい。

ちょっとふざけた書き方のせいもあるけど、西洋的な倫理観はベースにしつつも、現実ではそれだけじゃなくてもう少し卑近なバランス感覚や、ちょっとした愛着やメンツや責任感(身に染み付いたしがらみみたいなもの)が力を持つ感じが滲み出てるとこが良いのかも。

普通なら主役になる少年少女やネズミたちじゃなく、脇役ポジションの猫を主人公にしたのがメチャクチャ巧いやり方だと思う。人間とネズミは成長する、一方ネコは……。読み終わったとき、笑えて、寂しくて、でもわくわくが続く。私は一緒に冒険したモーリスが好きになってしまって、お話が終わってさよならした今でも、きっと今もどこかで上手くやってるんだろうって感じと、一部はずっと一緒にいる気がする。チビすけだった我が子たちとの時間もそんな感じ。
 それはさ、ぼくたちが心やさしいネコだからだよ、とモーリスの良心がいった。
 いいや、やさしくなんかない、とモーリスは思った。
 ああ、たしかにやさしくない、と良心。でもね、デンジャラスビーンズにそんなことを知られるのはいやだろ?あのちっこい鼻をひくひくさせてるやつにさ。
「まったく、人間ってものをまるで知らねえんだな」
モーリスはもう一つため息をついた。
「おっしゃいますけどねえ、あたし、人間なんですからね!」
「だからどうだってんだ? ネコってのは人間のことをようく知ってんだよ。知らなくちゃやっていけない。戸棚をあけられるのは人間だけだからな。いいか、あのネズミ王だって、よっぽどましな計画を思いつくぜ。いい計画ってのはだなあ、片方が勝ったんじゃだめなんだ。負けたと思うやつがひとりも出ないようにしないと。」


[PR]

by macchi73 | 2018-04-08 23:55 | 面白かった本など | Comments(5)
2018年 03月 31日
三月日記:菫の群生
e0134713_1305180.jpg
今日は出勤がてら、毎年スミレが乱れ咲くお気に入りの場所をチェックに行った。

よし!今年も一面に咲き乱れて、地面がほんのり薄紫に染まっているのを確認!何ごとも変わりなし!
e0134713_1304998.jpg
ただ、あともう少しすると、あちこち株が掘り返されて穴だらけの地面になって寂しい気持ちになるのも毎年恒例のイベントなのだった。一応、園芸には全く関係無い公共の場所なんだけど、立ち入り禁止にはしていない寂れた場所なので、知ってる人は知ってる穴場なんだろう(私も知ってる訳だし。掘らないが)。

でもまあ、それでも毎年こんなに咲くんだから、菫ライフ的には掘られることも含めてうまく回ってるのかな。それとも全然掘られなかったら、これ以上の繁栄を誇ったりもするんだろうか。さらに高密度の菫の地面、見てみたい気もするが。
e0134713_1304663.jpg
ということで、これで三月日記も終わり!

園芸的に役に立つ記事もなく、本当にただの日記になっちゃったけど、とりあえず一ヶ月の頻回更新はやり遂げた(……って、別に誰の得にもならない試みだが)。この調子で、今年は計画的&有言実行でいく。ちなみに明日からは四月なので通常更新に戻してく(←有言しとく)。

次に有言実行するのは日々のエクササイズだ。もちろん、ブログには載せないが。
健診結果の跳ね上がり具合がとんでもなく、この急勾配を維持したら近々に天国の門が見えちゃうんじゃ?という現実への危機感を持って(大げさ)、次回の検診までには、きっと改善をする所存。末っ子が手を離れるまで、あと十年は元気で働かないとだしなあ。

* * * * * * * * * * * * * *

哀れ菫たちの拉致を予め知っているのに、不可避のイベントとして黙って見てる、そんな状況つながりで。

『予告された殺人の記録』(ガルシア・マルケス)

ミステリみたいなタイトルだが、ミステリではない。

マルケスの土着感&まじないに満ちた小説は、「これって面白いって言えるのかな?むしろ退屈か?」とかいつも頭の半分で思いつつ、どういう訳か凄く好きなんだけど、その中でも何故か(と思ってしまう……)小粒感のあるこの話が一番好き。

とても面倒臭い変人と人騒がせな女との、すごく馬鹿らしいロマンチックな物語でもあると思う。


[PR]

by macchi73 | 2018-03-31 23:58 | 【その他】日記 | Comments(5)