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『未来世紀ブラジル』(テリー・ギリアム)、甘い夢に殺される・生かされる

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犬もあるけば棒に当たる。庭を歩けば栗を蹴飛ばす。どっちも痛い。ここ数日、指がシクシク。

娘夫婦の家に落ち着いた初孫を見に行った。息子がじゃあ車を出すよと参入してきたのでずらり一家で訪問し、いかにも若夫婦らしい懐かしくも簡素な雰囲気のお家で赤子を眺める。新生児ってこんなに小さいんだっけ……久しぶり過ぎて夫も私もぎこちなく触れるだけなのに、もう娘夫婦はふんわり優しい慣れた手つきで、さすがお父さんお母さんだなと思う。ブランニュー伯父叔母である息子も末っ子も、赤子に触れるたびにクスクス笑いが止まらない。なんか、窓辺を背にした赤ちゃんをみんなで覗き込む様子が、後光のように白く光って見えた。ほんとにこれから楽しいことがいっぱいあるように。

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途中で何度も仕事の電話とチャットが入っているのに気づいて離脱。たまたまだけど、どれも内外でのちょっとずつ例外&管轄外のケースについてどうすべきかという連絡だった。この世に壁がなくてお互い必要なものにアクセスできたら、それぞれが良心と透明性を以って自由に振る舞えばいいだけなんだろうけどなあ。セクショナリズムというものはどうしてもあって、あっちの壁を無くしたと思ってもこっちに生えてきたりとなかなか難しい。更にそれって単に構造的な問題ってだけじゃなく、もう一つの原因、たまーに感じるんだけど、人間には、他者に自らの権能を振るいたいっていう欲求が意外とあるのかもなって気もする。それがセクショナリズムみたいな出方をする時って、何となく生物としての感情的なところでも、自分がもっと尊重されるべき・認められるべきと感じていることの、間接的な表現の気がするときもある。狭く区切られた範囲での、自分の持っている力を示す系の表出というか。うーん、でもやっぱ、そうなると根源的な原因は、区画が狭くてのびのびできない構造ってことになるのかなあ。

そんなこと少し考えながら仕事して、最後は休日気分で締めたくて映画を一本、80年代イギリス映画『未来世紀ブラジル』。セクショナリズムの行き着く果てで、人間性は生き残ることができるのか?という話かな。モンティ・パイソンのテリー・ギリアムが監督のディストピアもので、見た後は胸が重くなるけどかなり好きな映画かも。



主人公はナイーブな青年、家族や友人のように極端な管理社会で出世していくことを回避しながら、灰色の日々からの逃避のように、いつも架空の恋人との淡い童話のような夢を見ている。

ここで描かれてる管理社会の成れの果てのイメージは、ステレオタイプに戯画化されてて、皆どこかで見たことがあるようなシーンばかりだとは思うんだけど……でも、この社会って本当にそういう側面はあるよな。セクショナリズムによる馬鹿らしい手続き手続きの連続で、そこでは人間も一人の個人じゃなくて分断された情報の寄せ集めになり、連携も全然人間的じゃなくてストレスしかない。迷路のようなオフィスや最後の拷問機械も含めてカフカの不条理世界をブラック・コメディ風に映像化した感があるが、自分的にはかなりリアルな息苦しさでもあるなって思った。

その息苦しさに耐えきれないヤツが原初の方向へ逃げ出す夢を見るのも、また定番。1930年代のハクスリーが描いたディストピア小説『すばらしい新世界』の頃からのお馴染みの流れ。で、そんな弱者が辿る道も同じ、絵に描いたようなドロップ・アウト。
デ・ニーロ演ずる自由派配管テロリストが現れるたび、すがる気分でホッとする。ここから助け出してくれよ。でも、その彼さえも紙屑となって霧散した時の迷子感……怖い。できればドロップアウトはしたくない。

管理社会 v.s. 逃避の夢、どちらの定番カリカチュアも、テリー・ギリアムらしい不条理ヘンテコ映像によって独自なものとなって、グッと胸に迫ってくる感じだった。前者は物凄く悪夢的だし、後者は笑えるのを通り越して、泣けてしまうほどドリーミィ。でもすごく分かるんだ、そういう逃避タイプの見る夢の意味も。主人公は、幼稚な夢に殺されたとも言えるけど、夢のおかげで生きられた面もあると思う。

人間の夢みがちな部分って、抑えても抑えても殺しにくい性質だと思う、子どもは割とみんな夢みがちだし。一方、人が集まれば管理したくなる欲も、なかなか無くせない人間の種としての性質なのかもしれない。どっちもそれ自体で良いとか悪いとかいうものではないんだろうけど、自分の近しい人たちが、トゥーマッチ夢みがちだったら心配するけどまだ好きだと想像できる。でもトゥーマッチ管理志向になったら見るのが悲しいだろうな、もし安泰側に場所取りしてたとしても。そこに何かの答えがある気がしないでもない。



Commented by nam at 2025-09-24 16:09
わ〜僕の大好きな映画!!若い頃見た中でもベストマッチの一本でした。今思うとその頃、かなり抑鬱的だったんですね。猫好き、庭作業3年目の多分少しだけ下の世代♂ですが、マッチさんのブログ、どの記事も、素敵な感性が溢れていてとても快く読ませて頂いております。思わずコメントしてしまいました、、配管工事の活動家(だったと思う…?)が格好良いんですよね!!バトル氏だったかな〜。
Commented by nam at 2025-09-24 16:22
あ、すみません、ちゃんと配管工テロリストの事書いてありました。勢いで読み進み、勢いのままコメントしてしまいました。まだこの2、3ヶ月の新参の読者です。御体調を大切に、、これからも楽しみにしております。
Commented by macchi73 at 2025-09-25 21:54
namさん、
あ、バトルが誤認逮捕されたおじさんで、配管工はタトルかな。格好良いですよねー。
悪夢の中の自由な人間って感じで、彼が出てくるだけで心が明るくなったしホッとした……自分もどんなときでもああいう感じでありたいものです。
きっと「タトル&テロリスト集団」ってのはサムの最後の夢の中で起こったシンボルとしての紐付けってだけだろうから、タトル氏の反抗活動はアングラ配管のシーンだけが現実の話だったんでしょうけどね。
あの、シューっとロープで去るスタイル、自分の生活にも取り入れたいものです(嘘)。

友人ジャックも、印象的でしたよね。
壊れちゃった後の人って感じで、怖かったし、なんだか泣けちゃって。
Commented by nam at 2025-09-26 14:51
えっ!?ジャック!?すみません!マッチさん!ジャックを全然覚えて無いっ!!!記憶って恐ろしいですね…。主人公、配管工の活動家ヒーロー、憧れの夢の美女、顔の皮膚を引っ張るオバハン、この位しか登場人物の記憶が無い。しかも主人公の名前がタトルで、タイプライターの蝿のせいで綴りを間違えられ、消されそうになり、そこに救いに来た活動家バトル、と言う事になっていた。何回か観てるのにな〜。本当、あんなに格好良い登場&退場を出来る様になりたいですね♪イアン・ホルムが可愛かったな〜…。初めて見たのはもう30数年前の三鷹オスカーと言う映画館(名画座)で、テリー・ギリアム監督特集でした。ブラジル、バロン、バンディットQの三本立て。良い時代でした。いや、吉祥寺バウスシアターだったかもな?当時はこういったニッチな特集上映がたくさんあり、結構足を運びました。今回はコメントさせて下さりありがとうございました◎
Commented by macchi73 at 2025-09-26 21:32
そっかー。記憶って面白いですよね。だんだん自分風になる。
吉祥寺バウスシアターは私も割と行ったかもです……懐かしい。あとは夜バイトの後に池袋文芸坐とか早稲田松竹、ACTミニシアターでオールナイトとか観てたかな。三鷹オスカーは知らないなと思ったら、1990初頭に閉館されてるんですね。その頃は私はまだ田舎の映画館で主にクンフー映画かB級ホラーとか見てましたね。どの館も、最低でも2本立てで料金も安かった……

それが東京に来て、アート系の単館映画というオシャレなものを知って(「1本立てだし、入場は総入れ替え制で、途中で好き勝手に入場できないだと!?」と)、バイトの間の時間潰しもあって一時期物珍しく通ってたのでした。途中で上映反対派が雪崩混んできて場内揉み合いになって警察が来たりもあったなー。若い頃って、好奇心があって何でも面白かった気がします。

バンディットQは観てないので、観てみます!
またそのうち、面白かったおすすめとかあれば教えてください。ではではー
Commented by nam at 2025-09-27 18:09
三鷹オスカー、調べたらもう閉館35年ですか。料金忘れてたけど、3本立てが何と1000円で見られたんですね!そうそう、入れ替え制なんて無い頃で。反対派が雪崩込んで来たのは、なんの映画か分からないけど、右翼も左翼も元気な時代でした。クンフー映画は僕も良く見ましたね!ジャッキー、サモハンキンポー、少林寺というところでしょうか。ほぼ同年代の気がして来ました。テリー・ギリアムの中ではやはりブラジルが突出してると思いますが、なぜその作品だけが特別な名作になったのか…制作の過程とか関わった人物とか、詳しく知りたくなってしまいます。バンディットQも今観たらどう感じるのだろう〜。マッチさんの映画の好みがまだ分かりませんが、沢山ある今までの記事を楽しく読ませて頂きますね◎またその内!!ありがとうございました。
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by macchi73 | 2025-09-23 23:02 | ★面白かった本など | Comments(6)

東京の住宅地で試みる素敵ガーデン・ブログのはずだった。なのに昆虫の記事がダントツで多い。虫 & 植物 & 子供の記録。本は殆どブログのアフィリエイトポイントで買わせてもらってます。感謝!/【※】画面最下部の「表示モード」でPCレイアウト選択後、もう1回リロードすると広告無しにできます。


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