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2023年 03月 17日
ぱらいそ、『天使のいる廃墟』(フリオ・ホセ・オルドバス)
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庭の地面、少し前までは白木蓮の白い花弁にアンズの薄桃の水玉が散っていて綺麗だった。

しかし今は褐色に変色して。
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見た目と裏腹に地面から立ち上る匂いはまだ甘い。今の時季、色んな花の芳香が交じり合ってるんだとは思うけど、全部をまとめてラッピングしてるのは、地面で朽ちつつある大量の花びらの香りなんじゃないかなあと思ってる。瑞々しい白い花弁がゆっくり色褪せて行くときの匂い、温かくて少し湿っていて甘い。

庭全体が何とも言えない淡い芳香に包まれてる。
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ずっと上の方から花びらが間欠的に落ちてくる。大きな花びらだから、途中で他の樹木の梢や家の庇を打って、コトリ、パタリと結構な音をたてて降る。

ゴトっと音がして、うわ特大だなと思ったら、花ではなくて猫が降ってた。高ーい二階の屋根から、枝や庇を使って上手く落ちて来るんだよねえ。いつも朝方に寝室の窓際に重たげに落ちてくるから、目覚ましがわりにもなるんだけど。

私よりもずっとずっと庭で過ごす時間が長く、この庭の隅々まで知っている猫だ。多分、花いっぱいの木の上を歩きながら、今年も真っ白な世界になったなあとか、あー全部落ちて茶色のこの景色がまた来たなあとか、思うともなく認識している気はする。
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* * * * *


ゆっくり朽ちてく花、人、廃墟。


『天使のいる廃墟』(フリオ・ホセ・オルドバス)


死にたい人が訪れる廃墟、パライソ・アルトに住んでいる自称「天使」。たぶん冴えないおっさん。普段はひとりぼっちで廃墟の散策や掃除、かつての住民の日記を読んだりしながら暇を潰し、訪問があれば彼・彼女らが旅立つお手伝いや後片付けをしたりする。

そんな天使の、死んでいく人たちとの最期のお喋りを綴った、のんびり田舎ライフ日記(か?)。

話としては、別に面白くはない、むしろほんのり退屈気味。でも朽ちてく廃墟なんてそんなもんか。次々訪れてあっけなく死んでいく人たちの物語も簡素ながら様々だし、何となく自分も日がな一日廃墟で暇潰ししているような眠たい気分で最後まで付き合ってしまう。自分の終わりのときにも、これくらい適当で、善でもなくそれほど邪悪でもなく、あまり役にも立たない天使に介添えしてもらうのも悪くないかもなあって気分にはなる。





ま、とは言え、ぱらいそだったら私は断然、諸星派。
中でも一番好きなぱらいそ(またはいんへるの)は、栞と紙魚子の住む胃の頭町だけどね。
迷い込みたい。切望する。




by macchi73 | 2023-03-17 22:15 | ★面白かった本など | Comments(2)
Commented by africaj at 2023-03-18 14:44
そちらは木蓮が散っちゃったんですね!はやっ。
こちらはやっと膨らんだ蕾にスリットが入って、花びらをのぞかせ始めました。
でも今日はまた冬に逆戻り。いつ咲くのかワクワクの日々です♪
Commented by macchi73 at 2023-03-19 12:30
春先はホント三寒四温って感じですねー。
こちらも昨日は冷たい雨だったのに、今日は春らしくて。
娘に春物の相談されながら、いやいやまだ寒い日もあるかもよ、、、と話してます。
そちらは今から木蓮なんですね。華やかだからなー、羨ましい!咲くの待ってる時のワクワク感、良いもんですよねえ。
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