生き延びた、『女はみんな生きている』(Chaos)
2022年 02月 28日

庭の梅の木、今年は全然枝しか見えないのに、花見しようよ!と夫が毎日言う。
いやー咲いてないじゃん、我々素人が乱暴に移植したから弱っちゃってんだよ、もうダメかもよと断っても、いや咲いてるから!としつこい。いま、年度末の追い込みと新しい分野の勉強でクタクタで動く気が全然しないのに……。
で、今日の朝コーヒーは花見しながらだからねと言われ、カフェインに釣られてパジャマのまま庭に出たら、ぽつぽつとほんの十輪くらいが貧相に枝にしがみつくように咲いていた。ほらね咲いてるでしょ!と得意気に言われてもなー。なんとも小さい花見だな。はは、しょぼ。でもとりあえず枯れてはなかったんだ。良かった。
梅の木の根元には、福寿草が咲いてるのも見つけた。
去年までは庭で一番最初に咲く花だったのに今年は顔を出さないから、やはり引っ越しでダメにしちゃったかと思ってたけど、こちらも何とか生き延びたっぽい。今は例年の十分の一くらいの小さな感じだけど、こっからお日様浴びて株を充実させて、年々また大きくなるのかな。また最初からもう一回だね。


ある夜、中年夫妻が運転する車の前に男たちに追われる若い女性が助けを求めて飛び出してくる。窓の外でボコボコにされて血まみれになる彼女を見ながらも、事勿れ主義の夫は面倒事に関わるまいとそのまま強引に車を出してしまう。しかし妻エレーヌは彼女のことが気になって、夫に隠れて通報し、翌日女性が収容された病院を見舞いに行くが……という話。
エレーヌは日々の些末時に忙しく、夫や息子にお手伝い扱いされても特に何もせず惰性でそのまま暮らしている。甘やかして育てたせいで自分勝手に育った息子に冷たくあしらわれる夫の母の寂しい様子は、エレーヌの将来の姿にも重なるようだ。しかし男尊女卑のイスラームの中で育ち、切迫した状況の中でも自分の意志で生きることに貪欲な女・ノエミと出会い、彼女を心配し手助けしていく中で、一回きりの人生をフルに生きる方向に舵を切り始める……とか書くと、「ああ、女性自立のよくある筋立てね」って感じだし、実際そうなんだが。
最初病院に行ったときは脳損傷で全身麻痺していたノエミがどんどんアクションをこなすくらい回復していく様子とか、息子も夫もノエミの凄テクに夢中になってうっとりドリーム語り出す感じとか、かなり馬鹿げていて、何じゃこりゃ?って感じでちょっと笑える。原題が ”Chaos” ってのも、むべなるかな。チープな感じのドタバタ劇なんだけど、ハリウッドとは違う、早送りだったり冗長だったりの欧風テンポでカオス感いや増す。女たちが海を眺めるラストシーンでの四者四様の表情も何だか変テコで、最後は何となく良いもの見た気分。そんな映画。
エレーヌがノエミを助ける実際的な手際の良さや、他者に共感的なところはいかにもしっかり者の女性らしくて、惰性とはいえ人を世話する日々をこなして来たからこその佇まいというか、やって来たことは何も無駄ではないんだなって感じがしてよかった。