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2020年 07月 30日
長梅雨で徒長する、『息吹』(テッド・チャン)
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長い。梅雨っていつもこんなに長かったっけ?7月も終わろうとしてるのに、毎日雨だ。長梅雨で庭の作物に不穏な気配。徒長と病気があちこちに見られる。草々が、ぐったりしてる。

その中で、インゲン豆だけは目立って元気。ぐんぐん蔓を伸ばし、庭隅の一角を着々と覆い尽くし中(よく見るとヤマイモや昼顔の蔓も混じってるけど……)。蔓あり種は既に2mくらいに伸び、蔓なし種も80-100cmの薮を作ってる。これは梅雨が明けてからの収穫が楽しみかも。
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それから、多分こちらは梅雨とは関係ないと思うが、仔猫もいきなり長く伸びた。

数日ほど庭であまり見かけず、巨体の雄猫(父猫かな?猫って父子の認識あるのか?)と歩き回る姿を近所の路地で何度か見かけ、その後また庭に戻ってきたと思ったら、急に大きくズッシリした筋肉質の体になっていたのだった。多分いま生後5,6ヶ月くらいだと思うんだけど、もう母猫に迫る体長に見える。男子三日会わざれば刮目してとはいうが、猫の成長って、こんなに突発的なのか?不在がちだった数日間はどんな数日間だったのか、興味ある。

ちなみに帰宅した日、もう大きいくせに母猫のおっぱいを飲もうとトライして、母猫に激しく拒否され、目に見えてションボリする様子を家族たちに目撃されている。その後、家に入って来たと思ったら、やたら人間にまとわりついて暴れて八つ当たりしまくって、最後は疲れてフテ寝してた様子がおかしくて笑ってしまった。母猫はクールになっちゃったけど、仔猫の方では、まだお母さんの子供って思ってるんだなあ。ふふ、猫もこんな風に見るからにムシャクシャするんだね……と家族たちに優しく気を使われている様子も笑ってしまった。ちょっと擬人化し過ぎかもだけどね。

(PCデスクの椅子を気に入ってしまったせいで、リモートワークがしにくい。人ではなく猫優先か。ちっ)
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きっと、これからぐんぐん大人の猫になるんだろうな……。常時シッポをピンと垂直に立てて歩く様子や、人を見れば寄ってきて触る前からゴロゴロ言いだす様子は赤ちゃんっぽい雰囲気だけど、猫年齢的には、そろそろ青年期に入っちゃうのか?

亡くなった田舎の飼猫もずいぶん後になってからだけど去勢はしてたから、するなら早めにタイミング見てそうする方が良いのかな……などと目下迷い中。えっ、去勢かわいそうじゃん!酷い!という夫の批難の声は重々理解しているので一旦しばしノイズキャンセルさせてもらいつつ、本やサイトで猫の生態や飼い方を調べて、考え中。擬人化はすまい、でもじゃあどこが判断基準になるのか?と、頭に浮かぶ要素が多すぎて。とりあえず棲家になる夫実家には要相談だな。

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(何かと家に入り込み、安心しきって寛いでいるのを見れば、飼猫の幸せってのもあるんだなってのは感じる今日この頃)

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ちょっと前に読んだテッド・チャンのSF短編集。
うへえ、AIですら育てる上では様々な選択や責任が生じてしまうのか……と、読みながら猫のことをチラッと思った。「自分のことは自分で選ぶ」が一番シンプルだから何でもそうしたいけど、スッパリそうはいかない事柄や場面って多い。他者に関わることの難しさ・面倒さだな。

『息吹』(テッド・チャン)

どの短編もけっこう作風が違う感じで、好みだったのとそうでもないのがあった。以下、既にうろ覚えになってて解釈や記憶が間違ってるかもしれない、そして凄く個人的な好みに偏った覚え書き。

<好きだったのは>
●商人と錬金術師の門:最初の一編。これが好きな感じだったんで、掴みはオッケー!って気分で最後まで期待高くグイグイ読んじゃった。千一夜物語風の語りかけ文体って、映画でも小説でも、すごく好きなんだよな……。
●不安は自由のめまい:パラレル・ワールドも、個人的に好きな分野なんだよな……。個々のガジェットを起動した時点からの平行世界同士が、そのガジェット経由で通信できるっていう設定は面白いと思った。物語的にも、あっ、じゃあ彼女はそっちの行動したってこと!?っていう驚きが途中にあったりで(ちょい叙述トリック系)、肌触りがSFってよりヒューマン・ドラマっぽい。それが巧くもあり、SFっぽさを薄めてる感もあり。平行世界の話だと、私はPKディックの『囚われのマーケット』(人情味は皆無で、アイデア勝負の短編)の、時が分岐・分岐でブワーっと樹形図か毛細血管みたいに広がる様子が見える化されてる感じ(そしてその中から選んだ道を辿ってドライブする強欲婆)がかなり好きで、それより分岐の広がりが目に見えるようか・そうでないかで判定しがち。そのとても偏った判定方法で言うと、これはパラレル・ワールドものとして中くらいの面白さ。
●偽りのない事実、偽りのない気持ち:これもSFとして面白いか?っていうと微妙なんだけど、日常のあるあるとして、頷きながら読んでしまった。そうなんだよ、喧嘩でも何でも記憶の細部は各人の色がついてるよね、記憶って事実とは違うものだよね、良くも悪くも・大きくも小さくも、って話。
●ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル:AIBO的なAIの個性化のために、まるで子どもを育てるようにケアする人間の飼育係や養育者がつく話。そしてAIたち本人の自活や性的な分野への進出も、権利なのか搾取なのか、誰がどう決められるのか?と悩み始める養育者たち。ちょうど仔猫の件もあって、そして自分の子どもたちのことも思い出して、色々と考えさせられた。情緒や愛情、個性化の経験を圧縮学習させるのは難しく、10年分の複雑な経験をさせたかったら10年かけるしかないのかも。あと、そもそも人間の思うそういう大切な価値ってのが、AIにとって本当に必要なもの・メリットあるものなのかは考えてしまう。やっぱ別の仕組みだからな。人間側で擬人化して自分と同じだろうと思っても、実際は全然違う、要らぬ心配、大きなお世話ってことも多い気はする。でもそれを簡単に知る術はないから、難しい問題になるのか。
つかのま、アナはそれがうまくいったら、いったいどんな未来がひらけるだろうと甘美な夢想にふけった。
 アナの想像の中のジャックスは、リアルスペースでも現実世界でも、何年もの歳月をかけて成熟してゆく。企業化し、法人として働き、自分で生計を立てる。(略)ディジェントとともに育った新しい世代の人間たちは、アナの世代の人間とはまったく違う観点から、彼らを潜在的な恋愛パートナーとして見るだろう。愛し愛されるジャックス、論破したり妥協したりするジャックスを、アナは想像した。犠牲を払うジャックスを想像した。(略)
 気がつくと数分が過ぎていた。空想はいいかげんにしなさいと自分にいい聞かせる。そうしたことすべてをジャックスが実現できる保証はない。けれど、もし彼が挑戦するチャンスに恵まれるとしたら、アナは、いま目の前にある仕事を遂行しなければならない。すなわち、生きるという仕事をジャックスにせいいっぱい教えること。

<逆に、あんまりピンと来なかったのは>
●予期される未来: 予定説が本当だと判明したら、人はどうなると思う?という話かな。個人的には、そういう意味での自由意志というものが存在しなかったとしても、自分にとって未体験の日々をこれから通して味わうんだったら別にOKだな、全く問題ないなとしか思えないので、いまいちピンと来なかった。
●オムファロス: 創造主にとっての中心が地球ではなかったら?という話。これも個人的には別にOKだな、全く問題ないなとしか思えないので、語り手の悩みに感情移入できなかった。ただ、中心からみた物理法則と辺境からみた法則は違うだろうというアイデア、そして地球の物理法則等は後者なのだろうってのは、具体的に想像したら面白そうかも。じゃあ中心世界はどんな法則が支配するのか?とか。寧ろそっちの方の話が読みたい。
●息吹: 表題作で名作の評判高い一編なので、たぶん期待値が高すぎた
。あとがきで、作者はボルヘスの「バベルの図書館」的な世界(この宇宙とはまったく別の完結した小さな宇宙というか、とても抽象度の高いイメージ世界というか……)を想定して書いたと読んで、「あっ、そう読めばもっと面白かったかも!勿体無いことした!!」って思った。私はこの世界の遠い地続きの話として読んじゃって、普通SFだな、って思ってしまった。ボルヘスや幻想系の人たちが得意な、なんかそこだけで完結する世界の無駄に精密な細部というか、モワッと閉じた雰囲気がもうちょいあれば、絶対に好きな話だったはず(雰囲気には翻訳も関係するから、原文で読めばそうだったのかもしれないが)。『驚愕の曠野』とか、そんなタイプのSFとして、凄く好きなんだよな。




by macchi73 | 2020-07-30 06:00 | 面白かった本など | Comments(0)
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