スズキ式ジュースマシン
2019年 05月 11日
ずっと昔によくウィンドウショッピングしてた質屋さん界隈を夫と二人で散歩した。久しぶり。すごく懐かしいねと話しながらガラス戸を覗き込んでたら、あ、あれ買おうかなと、夫が指差したのは手動のジューサー。使ったことないからちゃんと動くかも分からないんだけどね、と奥から出てきたお店のご主人が言う。まけてあげるよ。金弐千円也。果たして高くつくのか、安くつくのか?
帰宅して、分解して、煮沸消毒して、磨いて、早速使ってみる。
万力でテーブルに固定したら、高さが足りなくてグラスが置けない。うちで一番小さいグラスですら置けない。えっ?どういうこと?色々試したが、これ以上高さが出ないようだ。うへー平たいヤツだなあ!仕方ないので少し深めの平皿を下に置く。出だしから怪しい雰囲気。それからハンドルを回したら、なぜか入れた野菜が出口ではなく本体奥の方に運ばれるおかしな動線。変なところからジュースが出てきた。うおっ!慌ててハンドルを逆回転させたら、こんどは入れた野菜が上方へ飛び出す!あまりの結果に変な笑いが止まらない……。寝不足ハイテンション。
その後、もしかして歯車の向きが逆なのかなと組み立て直したら、スイスイ野菜を吸い込むようになった。おおー、当たり前の動作かもしれないけど、失敗の後だとことさら素晴らしいね!
少し水で薄めて、氷を入れて、やっと美味しくなった。
それから正しい使い方を調べようとウェブで検索したら(遅い)、これは発明家・鈴木忠治郎による圧搾式手動ジューサー「鈴木の生きたジュースマシン」というものだった。流行りのコールドプレスジュースってやつが作れる、今でいうスロージューサーの走りっぽい。なるほど、高速ジューサーと違って摩擦熱が発生しないので、熱に弱い栄養素がそのまま残る、と。撹拌もしないので素材の酸化も抑えると。美容にも健康にも良いと。ふんふん。何か健康界からの香しい風を感じる。ジ・インビテイション、トゥーダ、ヘルスィー・ワールド。
若い頃もこうやってぶらぶら散歩しまくって、質屋さんや救世軍バザーで何でも買ってたよなあ。家具、オーディオ、楽器、洋服。人の出入りが多い木造アパートで赤ん坊たちと遊び暮らし、友達には一体どこでそんな柄の服買うの?とか言われてたんだった(ぜんぶバザーで百円だよ)。お金はなくて時間はたっぷり。能天気で、毎日が凄く楽しかった。
これから子ども達はどんどん前に進むけど、親の役目が終わった我々大人は、また後ろに戻って行くのかもな。だんだんペースダウンして、また、あの楽しいところに、戻れると良いけど。なんつって。まだ少し隠居には早い。あともうちょっとは頑張る。
お金は無くとも時間はたっぷり有り、バイク二人乗りでドライブスルーに入ったり、ファミレスで注文後にお金が足りない事に気付き、たまたま財布に忍んでいた何かの記念硬貨で支払った思い出も。
ちょっとお高い喫茶店のシフォンケーキが食べてみたくて、紅茶も頼まず(頼めず)ケーキのみを注文した事もあったっけなぁ。(2分で食べ終わった後の手持ち無沙汰感よ!)
感覚は変わらないけど情熱は薄れてしまったような気がします。そして、体力も。
隣を見れば同じ思い出を共有している夫が居るのでいつでも戻れそうな気もしますが、あの頃とは生活スタイル(主に夫)と時間の使い方が違い過ぎているのできっと戻れないんだろうなぁ。随分と腰も重くなってしまったし。
あはは。貧乏生活が楽しかったのか、若い頃が楽しかったのか、もう渾然一体としていて分かりませんよね。
でも、一つ一つの物や旅行の価値は、昔の方がずっと高かった気がします。まあそれも、色々は手に入れられなかったから一つ一つをしつこいくらい味わったせいなのか(アルバム一枚買っても、今は好きな曲しか聴かなかったりするけど、昔は最初から最後まで飽きるほど聴いたし)、それとも若くて何でも可笑しい時期だったからなのかは分かりませんが。
そうですね、昔には戻れないけど、昔を共有してる伴侶と一緒にいられるってのは、貴重なことなのかも。大事にしますかね。