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2017年 03月 22日
氷の涯
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春だ庭だ花だとさんざ浮かれておきながら、家族をおいて一人で雪山なんか行ってる。

でも、雪山ですらもう春を感じた。

一面に広がる粗目雪が、クラックグラスみたいに陽光をキラキラと反射して春っぽい。真冬の雪のマットな質感とは全然違う。手にとって見ると、日中に溶けて夜にまた凍り……を繰り返して、小さなアイスキューブの集合体みたいになっているのが分かる。
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夜にも気温が下がらず無風状態のせいで、濃いガスが発生して視界が真っ白。
霧の白さは吹雪の白さとは違って、薄着でもほんのり暖かい感じがする。雪の上にウサギの足跡。幻想的でとても楽しい。夜の雪原でハイになる心。
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家族も一緒だったら良かったなーって時々思うが、でも一人の楽しさもあったりする。
まあ、家族全員、だんだんそうだろうな。
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地平線まで続く雪原を見ると常にワクワクしないか?夢野久作の『氷の涯』って、そんな感じ。



夢野久作っていえば、『ドグラ・マグラ』がチョー有名。

でも、『ドグラ・マグラ』、言うほど面白いか?面白くないことはないが、チャカポコ・インパクトによる過大評価じゃないか?という気がするのは、『氷の涯』の方がずっと面白いのになーって思うから。

シベリア出兵の下っ端一等兵が軍内の横領事件に巻き込まれ、濡れ衣を着せられ、どん詰まりになって、ロシア娘ニーナと氷の涯に逃避行するラストが凄く良い。二人とも死んでもいい(たぶん死ぬ)っては思ってるんだけど、その瞬間は未来はまだオープンなまま、スカッとした終わり方。スパイ・冒険・探偵小説の趣あり。

夢野久作って私の中ではB級作家ポジションなんだけど、氷の涯のラストの余韻だけは『グレート・ギャツビー』のラストに並んでもOKくらいの軽やかさと格調高さだと個人的に判定する。かなり好き。


註文した馬と橇はモウ下の物置の中に、鋸屑を敷いて繋いで在る。張り切っている若馬だから一晩ぐらい走り続けても大丈夫だと、世話をしてくれた崔が保証した。

僕等は今夜十二時過にこの橇に乗って出かけるのだ。まず上等の朝鮮人参を一本、馬に嚙ませてから、ニーナが編んだハンド・バッグに、やはり上等のウイスキーの角瓶を四五本詰め込む。それから海岸通りの荷馬車揚場の斜面に来て、そこから凍結した海の上に辷り出すのだ。ちょうど満月で雲も何も無いのだからトテモ素敵な眺めであろう。

ルスキー島をまわったら一直線に沖の方に向って馬を鞭つのだ。そうしてウイスキーを飲み飲みどこまでもどこまでも沖へ出るのだ。
そうすると、月のいい晩だったら氷がだんだんと真珠のような色から、虹のような色に、変化して眼がチクチクと痛くなって来る。それでも構わずにグングン沖へ出て行くと、今度は氷がだんだん真黒く見えて来るが、それから先は、ドウなっているか誰も知らないのだそうだ。

(中略)

「もし氷が日本まで続いていたらドウスル……」
と云ったら、彼女は編棒をゴジャゴジャにして笑いこけた。


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by macchi73 | 2017-03-22 18:00 | 面白かった本など | Comments(0)
2017年 03月 06日
梅の花 かばかりにほふ春の夜の やみは風こそうれしかりけれ
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寝室の窓から見える、梅の大木が満開だ。
朝も夜も、風がフワッと吹くたび馥郁たる香りと白い花びらが流れてくる。すごく綺麗で、見てると気分がすーっとする。

樹上も綺麗だが、地面も綺麗。散った花びらが桜貝みたいだ。

あ、例えが逆か。可憐な花びらに似た貝だから桜貝の名がついた訳だよな。
しかし梅貝と書いてしまうと、全然可憐じゃない貝になってしまうのは、なにか梅が不憫。そういえば、奈良時代までは和歌の中で花といえば梅だったのが、平安時代の途中から花といえば桜にとって替わられてしまったようだ。プリマ交代の趣。

一説によれば、平安京の中心部の植栽が梅から桜に植え替えられたことがその理由らしい。平安後期に書かれた日本最古のガーデニング書『作庭記(さいてくき)』にも、庭には桜を植えるべしとあるようだが、たぶん現代のガーデニングと同様、ハイソなお洒落ガーデンの最たるものである都の庭に憧れての桜ブームがあったんではないかと想像する。

流行りの植栽に弱いんだよなー。そのミーハー心、わかる。ガーデナーなんて、みんなそう(←偏見。単に自分がそう)。
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まだ梅の方が圧倒的に人気の時代があった。詠まれた歌の数は、梅が桜の2、3倍。

『万葉集』

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by macchi73 | 2017-03-06 21:30 | 栽培日記:春の植物 | Comments(2)
2017年 02月 11日
立春の候、世界の片隅で君の名を
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直行直帰の仕事で、いつもより少しゆっくり目に家を出たら、庭の梅が咲いていた。
花の満開はもう過ぎたっぽいけど、それでも庭を通って門扉まで、近くを通ればふんわり梅の香りがする。春だなー。

まだ寒い時期に「春だなー」って思うのって、なにか新品感があって嬉しいもんだ。新春とか立春とかいう言葉の、めでたい感じ。

先月今月は、一人でいろいろと馴染みのない場所に行く仕事が多くてちょっと楽しい。

昼間乗り物に揺られて遠くまで足を伸ばしたり、いろんな人に話を聞いたり、珍しい設備使わせてもらったり試験受けたり、いつもと少し違う動きをしていると、仕事もそろそろ飽きたと思ってたけどやっぱり楽しいかもなと思ったり。一人で移動すること、シーンとした知らない建物を歩きまわること、ずらっと並んだ資料や設備を見ることが、けっこう好きかもなと思う。あまり仕事の本質に関係ない部分なので、そんなに人には言えないが。

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出先からの帰り道、以前よんで面白かった漫画の映画がやってたので観て帰った。

『この世界の片隅に』

原作つきの映画って原作の方が面白いことが多いけど、これは映画もかなり良かった。

特に、小さい子の悲しい場面の表現が、映画ならではの見せ方で、派手ではないのに衝撃的だった。

振り返れば、喪失したものたちとの過去も含んで、この世界が続いていくのは美しい、かも。



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そのちょっと前に子供と観た映画のことも思い出した。
どっちも「喪失に対してどうするか」を含んでいる部分で、少し共通するところもあるような、無いような。

コメントにも書いたが、二つの映画で解決方法が全然違うのが面白かった。

『君の名は』

現実には絶対に起こりえない「あの時こうだったら……」の実現が許容される世界の話だった。その時点で「え、それアリなの?」と、私は少し脱落気味。

が、実は喪失の痛みの最中にいる場合は、こういう物語が心惹かれたり癒やされたりするのかも?と、後で思い直したり。無くした場所、無くした人の、そうではない未来が生き生きと実現される世界を夢想する……。

そういう意味で、失われなかった世界の物語、取り零した分岐の先の物語も、この世には必要なのかもしれないね……とか言ったら、息子にはそういう話じゃないよ!と強く言われた。息子は監督のファンっぽい。適当な見方ですまない(←脱落してたからな)。


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by macchi73 | 2017-02-11 23:55 | 書籍など | Comments(2)
2016年 12月 25日
クリスマス卒業
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いつもは早朝から子供3人でくすくすガサゴソうるさいクリスマスが、今年は静かなものだった。
というのも、サンタからのプレゼントが末っ子にしか届かないという事態が初めて発生。上の双子たちは揃って成人に達してしまったからね、もうサンタ的には子供じゃないんだな。

午前中、二階に上がった末っ子がいつまでも降りてこないので見に行ったら、ベッドに埋まって顔を隠していた。どうやら今年のクリスマスはそんなに嬉しさ爆発の朝ではなかったようだ。なんだよ今年のプレゼントはピンと来なかったの?と聞いたら、それもあるけど(うわ)そういうことじゃない……と、顔を隠したまま布団に潜り込む。しばらく一緒に隣に寝そべってたが、なんとなく、気持ちは分かる気もした。

お昼、大学生の長女と一緒にランチの買い物に出る。
お日様が燦々と照る中、二人で小さいお店を色々見て歩くのは楽しいが、街全体も例年よりのんびり落ち着いていて、なんだかクリスマスの賑やかさが少ないみたい。それとも自分の気持ちの投影なのかな。

お店を見ていた長女が、「あ、これピノ子にそっくり」と言う。
見たら廃材から作った小さなロボが籠にいっぱい入っていて、全部デザインが違って面白い。中から3体、きょうだい其々にそっくりなロボを探し出してお土産に買って帰る。
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帰り道、むかし双子たちとよく散歩した道を歩いていたら、当時の小さな双子の柔らかな様子が鮮やかに目の前に浮かんできて、懐かしさにぶん殴られたみたいで少しクラクラした。あの時のチビスケたちと、今の大人になった双子たちは、同じ人間だけど同じではない。あのチビスケたちは今も君らの中にいるのか?

子供3人、いつもくっついてキャアキャア騒がしく転がり回って遊んでたのは、たぶん時間にしたら7, 8年くらいのもので、家族全体の歴史の中ではそんなに長い期間ではないと思う。でも多分、これから「家族」って聞いた時に思い浮かべてしまうのは、その賑やかでうるさくて大変だった短い期間のことなんだろうなあと思ったり。特に、生まれた瞬間が賑やかさのピークで、遊び相手の二人に一足先に巣立たれてしまう末っ子にとっては、これから色んなイベント縮小が続いて、少し寂しいのかもな。

ロボットを見るなり、うわー!Shiftキーのが欲しいけど、オレンジのをとるのを期待されている気がする!!だって見るからにオレンジがピノでピンクがレイクでシフトがマリオに似てるもん!と笑う末っ子。
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機嫌は直って、大学生が自分たちの用事で出かけるまで一緒に遊んだりプレゼント交換したり。若者たちは忙しいねえ。ピノもそのうちそうなるんだね。お楽しみ。

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ショックの一因でもあったかもしれない、なにかいつもと毛色の違うサンタからのクリスマスプレゼント......。これも何かからの卒業を意味するのか!?

『新版 学習まんが 日本の歴史』

でも午後になったら、楽しそうに読み進めていた。

歴史好きではないかもだが、本好き、漫画好きだもんね。


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by macchi73 | 2016-12-25 23:55 | 【その他】日記 | Comments(2)
2016年 12月 22日
ツムギアリ……じゃなくて蛾の巣網
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散歩してたら、椿の並木に、葉っぱを糸で綴った何かの虫の巣のようなものがあった。
サイズは小5の握りこぶしくらいかな。けっこう大きくて、ずっしりしてる。

糸が密に張られていて中はよく見えないが、覗き込むとみっちり、ごしゃごしゃと何かが詰まっている。手に持っていた小枝でちょっとだけ表面を裂いて中身を見てみようとしたが、糸で編まれた表面は弾力があって、枝でグイグイ突いたくらいでは傷つけることはできなかった。

春にオビカレハの幼虫(天幕毛虫)が作った巣の残骸なのかな?とも思ったけど、その割にがっしりしてて状態が綺麗な気がする。それに、オビカレハがつくのはバラ科の枝の又部分が多いっぽいけど、これは椿の葉っぱ部分だし。違う虫の巣なのかも……?

気になって、指で裂いて中身を見ようとしたら、一緒にいた夫が、嫌そうに「やめた方がいいよ」と言う。かわいそうって意味かな?と思って、ほんのちょっと裂いて覗くだけだから大丈夫だよ、すぐ戻すし、と言い訳したが、「もう……いいよ、行こう!早く!」と、物凄く嫌そう。なんで?と聞いたが、いいから!と、取り付く島もない。

それで追っかけながら、「なんでよう」「いいから!」のやりとりが繰り返される、あー、これは子どもたちと夫がよくやってる問答だ……。妻、子供ポジションに堕ちたり。がーん。

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で、家に帰って、謎の巣のことは忘れて、蟻関係の本をいろいろと読んでた。

そしたら本に出てきたアリの話を読んで、「えっ!あれってツムギアリの巣じゃないの!?」と胸がワクつく。

が、もっと調べたら、ツムギアリの分布は主に東南アジアで、日本だと琉球諸島に仲間がいるくらいらしい。うーん、じゃあやっぱりなんかの蛾なのかなー。ううーん、開いてもっとゆっくり見てくれば良かったなあ!
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→ 結局、気になりすぎて、もう一回見に行った。それで、おそらく幼虫で越冬する蛾の巣網らしいのはわかったが、詳しいことは調べ中。マエジロマダラメイガかなあ? アリじゃなくて、ちょい残念。

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なんでそんなにムリヤリ蟻の巣にしたい気分なのか?

それは、先日読んだ『裏山の奇人』(小松貴)が面白かったので、それ関係で、好蟻性生物の調査をしてる人の本などいろいろ読んでるところだから。

『昆虫はすごい』(丸山宗利)

昆虫についてのアレコレを、網羅的に順を追って説明してくれてる感のある一冊。読み終われば、色んな切り口で、昆虫というものをざっと見渡した気分になれる。

「あー、これ知ってる!読んだ or 自分でも見たことある!」って話と、全然知らない面白い虫の話が良い感じに入り混じってて、そんなに詳しくはないけど虫に興味ある人(=私)や子どもたちが、飽きずに読める内容だった。

一つ一つの項目は短くあっさりしてるので、よく知らなくて面白そうな部分については別途もっと詳しく調べたい感じが残った。



……で、せっかくだから好蟻性生物についてもっと知りたいと思い、続けて同著者の『アリの巣をめぐる冒険』も読んでみる。

『アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に』(丸山宗利)

こっちは著者の専門の好蟻性生物にフォーカスをあてつつ、学者としての歩みも分かる本。『昆虫はすごい』は虫自体の話だったが、こちらの本は、虫と、虫をめぐる昆虫学者の話という感じ。

昆虫の研究に関わる色んな人や場所が登場するが、その中に出てくる人の名になにか見覚えがあり、よくよく思い出したら、前にこのブログで変な虫を見つけたときに種名を教えてくれた当時大学院生の方だった。びっくりした。すごい!
本の趣旨とはちょっと離れるが、遠い憧れに思っていた昆虫研究話が少し身近に感じられて、なんだか嬉しく。


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by macchi73 | 2016-12-22 22:00 | 【生物】昆虫・その他の生物 | Comments(2)
2016年 12月 15日
冬の公園散歩
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平日休みをとって、冬の公園散歩。
今年は久々に仕事を綺麗に片付けて、気がかりなく冬休みに入れそう。嬉しい。

森の中に時々ある食堂で、ホットワイン飲んだりして温まりながらぶらぶらする。
なんか昼間の屋外って良いよなあ……。毎日お昼に自由に歩き回れるだけで、人間の幸福度って飛躍的に上がるんではないか?とか思ってしまう。

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サクサク落葉を踏みながら歩き回ったら、色んな鳥や虫が、色んな場所に潜んでいた。
キジバトが半分落葉に埋まるようにして座りこんでいることが多く(布団みたいで暖かいのかな?)、気づかず歩いていると足元から慌てて移動するのが可笑しくって、ちょっと申し訳ない感じ。

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ウラギンシジミの越冬が見られないかなーと思って、大きな椿の茂みの中を探して歩いたけど見つからず。
なんか首がチクチクするなと思ったら、頭上には毛虫の抜け殻がいっぱいだった。あらま。チャドクガか。

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それから読みたかった本を探したりして、家に帰る。
ぼちぼちとカードやプレゼントが届きだし、家の中にクリスマスの浮き足立った雰囲気が漂ってきたのを感じる。
これから楽しい時期がやってくる。

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フユシャクについて調べていた時に読んだ記事に何かフックがあったので、一冊読んでみた。面白い!

『裏山の奇人:野にたゆたう博物学』(小松貴)

著者が多少暑苦しい感はあるが(奇人だから?)、一人の生物好きの子供がそのまま好きでかつ得意な道に進んで大人になって、なんて幸せな話だろうと思った。わくわくする観察エピソードがいっぱい。社会的、職業的には大変そうな話もあったけど、自由な仕事をするなら、まあ若い時ってそうかもなって思ったり。

好蟻性の生物の研究が専門のようで、それらの記述も面白く、ウェルベルの『蟻』の世界を思い出しちゃった。蟻に関する図鑑や本も共著で色々出してるようなので、そっちも読んでみようっと。

それと、著者に倣って、この冬休みは私も庭のヒミズとネズミをじっくり待ち伏せ観察してみよう!と決心。

虫だけでなく、色んな動物を見るのも好きな著者が、テンに出会って最初は楽しく見てたのに、途中でふとビビりが入るところとか、すごく想像できて笑った。一人で何かしてる時って、そういうことままあるかも。でも一人じゃないと経験したり感じられないことって多いから、一人って怖くて楽しい。
目の前で普通に振る舞うテンを見るうち、私はだんだん恐ろしさを覚えはじめた。もともと、テンは古くから毛皮をとる目的で人間に撃ち殺されてきた動物である。そのため、野生のテンなら、普通人間を避けて行動するはずだ。なのに、この個体は私を見てもまったく恐る様子がなく、すぐ吐息がかかりそうな距離で当然のように振る舞っている。もしかしたら、こいつは私に襲いかかる用意があるのではないかと思えてきた。
...(中略)...
この一件で、私は餌など使わなくても、動かないことと音を出さないことを徹底すれば、まったく人慣れしないてい野生生物さえ至近で観察できるというのを学んだのだった。
あと、著者がスズメバチを手懐ける方法を読んで、前にシダクロスズメにソーセージをあげた時のことを思い出した。鷹匠ならぬ蜂匠、いかす!

昆虫絡みのエピソードではないが、著者とカラスの群れとのエピソードも笑った。
そういえば私が子どもの頃に仔ガラスを拾って庭隅で育ててた時、ピョコピョコ跳ねる仔ガラスをひざに乗せて餌を与えていると、大人のカラスが近くの木にたくさん集まってきてコッチを見てて面白かったんだよなー。あれ、仔ガラスがぐったりしてたら、敵と見なされて攻撃されたりもしたのかな。

ちなみに、その仔ガラスはとても懐き、私の肩にガッシリ爪をたてて留まるようになって(痛い)、鷹匠ならぬ蜂匠ならぬ烏匠の気分を味わわせてくれた。そして無事に飛べるようになって林に帰って行ったが、その後もかなりの間、呼べば応えてくれたものだった。だから今でも私はカラスは特別に好きだ。餌を見せればカア!と口をあけて赤いV字型の舌を丸見えにさせてたこと、嘴の側面についてた斜めの傷を撫でたときの手触り、ピョンピョンと庭の柿の木で飛行訓練してた姿、そんなことも思い出してみたりして。

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by macchi73 | 2016-12-15 21:00 | 書籍など | Comments(4)
2016年 12月 05日
雪虫(トドノネオオワタムシ/椴之根大綿虫)
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登山道を歩いていると、時々、ふわふわと目の前を白い虫が横切っていく。雪虫だ。

雪虫とは、晩秋から初冬に、体に白い蝋物質をまとって飛ぶアブラムシの総称らしい(白蝋物質をまとうタイプのアブラムシは色々いる)。しかし、雪虫という愛称で初雪の前触れとされるのは、主に北国に多くみられるトドノネオオワタムシを指すことが多いようだ。

動きはふんわりと弱々しいので、飛んでいるところをそっと捕まえることは容易。
それで優しくキャッチして目の前でよくよく見てみたけど、どうも今回のもトドノネオオワタムシっぽい。なんだ、北国じゃなくても普通にいるんだな。岩殿山には松がけっこう見られたから、そのせいもあるのかな。
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以前、庭のアブラムシの生態でも触れたが、アブラムシの通常形態は翅をもたない姿だが、シーズン後半には翅で空中移動するタイプの世代が発生する(交尾・産卵して、卵で越冬する準備のため)。

なので、冬直前に翅を生やした彼らがふわふわ飛び回る姿を見て、その雪に似た姿も相まって、北国の人たちは冬の訪れを感じるんだろうと思う。

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井上靖の『しろばんば』というタイトルも、雪虫の別称らしい。いま知った。

子供の頃に課題図書か何かでさらっと読んだはずだけど、あまり内容も覚えておらず、「しろばんば」とは主人公を可愛がるお婆さんのことかとずっと思い込んでいた……。

伊豆の描写が美しい物語のようなので、今読んだらむしろ良さそうな感触。冬休み、読んでみようかな。



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by macchi73 | 2016-12-05 23:55 | 【生物】昆虫・その他の生物 | Comments(0)
2016年 10月 10日
ハリガネムシと、衣替え
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ちょっと前から急に寒くなって、虫の死骸を見ることが増えた。なんだか寂しい感じがする。
って言っても、本当は常に虫は死んでるんで、取り立てて今の時期に特別に死骸が多いってことでもないんだろうけど。なにか冷え冷えとして、物悲しい。
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この間は、カマキリが死んで、そこに寄生してたハリガネムシも死ぬしかない、って場面を見た。

ハリガネムシは、本当なら秋頃には宿主を操って水場まで連れて行き、水中に脱出して越冬するはずなんだけど、途中で宿主に死なれてしまったようだ。カマキリもこの寒さで弱ってて水場まで辿り着く体力が無かったのか、それとも人に踏まれちゃったりした事故死なのか。



そんなこんなで、寒くて悲しい今日この頃。

なんでこんなに心もとないんだ……とめそめそ震えながらよく考えたら、ノースリーブや半袖しかないせいかもと気付いた。

それで、薄暗くて寒い週末に、衣替えをした。暖かい長袖を着たら、元気が出てきた。
人間って、虫とちがって衣類や自力で熱を保って冬を越し、いくつもの季節を見ることができるんだもんな。雪と氷の世界を知らず、一回きりの季節しか見ずにその辺にボタボタ落ちて死んでいく虫の分も、私は冬の景色をよく見て活動しようと思った。恒温動物として。長寿な生物として。まだ秋だけど。
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衣替えで、持ってる服を全部並べてみたら、もっさり大量だったのに驚いて、数えてみた。
スーツ2、ジャケット3、コート1、ジーンズ3、パンツ6(うへ、同じのばっか)、スカート3、ワンピース2(旅行用)、カーディガン2、ノースリーブ5、半袖7、長袖7、シャツ4、セーター2で、42着!(パジャマと運動着と式典用を除く)

服、そんなに持ってないと思ってたけど、年々増えて、けっこうあるもんだな。
だけどその中で毎日よく着てるのって、季節に関係なく1年中同じパンツ・同じTシャツだけだということに気づいてしまった……。しかも、古いものほどずーっと良く着てる気が。がーん。

で、着てないものは捨てようかと思ったけど、そうすると古いものを残して新しいものを捨てるというヘンテコなことになりそうだったので、この秋からは、全然着てないものも敢えて着るようにしてみて、それでも着なかったら処分しようかな、とか思う。

『運命の11着を選べると女の人生は動きだす』(MALIKA)

どんな服を選ぶかでどんな未来がやってくるかが決まる、らしい。なぜだ。

うまくやれば、どうも手持ちの服を11着まで減らせるっぽいので(違うかも。適当)、ちょっと読んでみようかなーとか思ったり。


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by macchi73 | 2016-10-10 13:22 | 【生物】昆虫・その他の生物 | Comments(7)
2016年 10月 09日
2016年の金木犀(雄しかいない樹)
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9月末から10月頭にかけては金木犀が満開だった。庭も家の中もずっと甘い香りで、なんだか浮かれる。

夜も窓を開け放して香りを楽しんでいたら、「今年は金木犀が早いよね、普通は10月も半ばくらいが花の時期だけど……」なんていう、道行く人の会話が聞こえて来た。

思わず、「そうなんですよ!私もそう思ってたんですけど、でも確かここ数年はずっと9月に満開日が来てんですよね……」と家の中から相槌を打ってしまいそうになる。が、夜中にびっくりさせては悪いので、実際には発声はしない。見知らぬ人への、脳内でのみの相槌だ。

それで植栽メモを引っ張り出して、ここ10年ほどの金木犀の満開日をチェックしてみると、やはり2014年からの3年間は9月後半が金木犀の満開日になっていた。

これってどういうことだろ?
単にここ3年の花期が早いと言えるのか、それとも寧ろ、10月後半が金木犀の時期だったのは昔の話で、今は9月後半が金木犀の季節と言うこともできるのか?

ねえ、そこのところ、あなたはどう思います?……くらいに脳内で見知らぬ人に話しかけ続けるとこだったが、その頃には当然、通りすがりの人たちはずっと先に行ってしまっているのだった。で、真っ暗な窓の外には、金木犀の香りだけ。


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そういう訳で、花の盛りが9月末なのは、ここ最近の流れから言うと実はそんなに驚くほど早いという訳でもないのだけれど、今年は花が散るのも早かった……と思う。迂闊なことに、毎年花の盛りばかり気にしていて花の終わりは記録していなかったので、もしかしたら感覚で言ってるだけかもしれないが。

ある日気づいたら、ちょっと前まで樹上にあったオレンジ色が全部地面に移動してしまっていて、「え、もう終わり?」と、ちょっとびっくりしたんだった。今年はずっと暑さが続いて、いきなりバタバタっと肌寒くなったからか?
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地面に落ちてしまった金木犀の花は、オレンジ色の絨毯みたいで綺麗ではあるけれど、踏ん付けて歩いても、もう、あの魅惑の香りはしないのであった。受粉のための虫を呼び寄せるための花の香りだと思えば、そりゃそうか。

だけど、金木犀は雌雄異株の樹木なのに、原産地の中国からはオスしか運び込まれなかったと聞く。そしたら、幾らたくさんの花を咲かせて虫を呼んでも、花粉がメスまで辿り着くことは無いんだな。さらに言えば、金木犀の香りは日本の蝶や蚊にはむしろ忌避効果となることが多いらしい。原産地では、その香りに呼ばれて来る虫がいたんだろうと思うけど。

呼ばんとする虫も雌もいないのに、それでも毎年辺り一帯を甘い香りにするほどたくさんの花を咲かせてると思うと、金木犀、ちょっと寂しい感じもする。

(でも、その芳香のせいで人の手によって挿木で殖やされてることを思えば、メスなしでも、実は繁殖戦略には成功してると言えるのか?)
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ブラッドベリの『霧笛』を思い出した。
呼んでる相手はもういない、というつながりで。


『ウは宇宙船のウ』(レイ・ブラッドベリ)


ブラッドベリの短編集。どの話もすごく良い。

『霧笛』は、ずっとひとりぼっちで何百万年も海底で眠っていた地球最後の恐竜が、仲間の声に似た灯台の霧笛に呼ばれてやって来て、霧の中、灯台に向かって、もうどこにもいない仲間を求めて鳴く話。

ブラッドベリが書くSFって、いつもなにかポエジーがあると思う。

(→萩尾望都の漫画版もあったので読んでみた。こちらも原作の詩情そのままで面白かった。)


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by macchi73 | 2016-10-09 22:20 | 本の感想など | Comments(5)
2016年 09月 19日
でたらめルアー
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子供と綺麗な魚の話したり、同僚のホビー話きいたりしてたら、いきなりルアーに興味が出てきて、試しに作り始めている今日この頃。

動画やウェブ記事に作り方を習い、「木を魚の形に削って」「重さ測って浮力計算して」「針金と重りを入れて」「アルミホイルに色んな鱗模様を押して貼って」「彩色して」「コーティングして」「リップつけて」……って、毎晩、ちょくちょく作業を進めるのが、なんだか無心になれて楽しい!
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でも、よく考えたら釣りってそんなにしたことないんだよな。釣りしない人間がルアーを作って使い物になるもんなのか?

それで釣りキチの友達に、いまルアー作ってんだ、どうだろ?と写真を送ったら「売れなさそう」との返事で、多少ガックリ。もっとリアルに作る方がイケてるらしい。釣具屋さんを視察に行った際には、けっこう変な形で派手派手なルアーがいっぱい並んでたんで、ある程度キラキラして極彩色なのが魚にアピールすんのかな?なんて思ってた。んじゃ次は、チョー・リアルに作ろう!と決心する。

でもまずは、多少バリエーションつけて10個くらい完成させてみて、釣りに使ってみたい。釣り行きたい。
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我が家の童にも、「ルアーを彫ることを習うよりも、なぜ釣りの勉強をなさらないのです?」なんて問われて、ドキッとしちゃって、宮本武蔵気分(嘘)。


「お仏像を彫ることを習うよりも、その暇に、なぜ、剣の勉強をなさらないのです?」という童の問いに、剣者が彫刻をするのは剣のこころを琢くためだと答える武蔵、剣豪ぽくてイカす!

勉強が面倒くさくて漫画読んじゃう行為とは、そっくりだけど、一線を画す!

ってことは、ルアーを彫るのも、釣りの心を磨くためになる可能性はある……!ルアー釣り、未だ一回もしたことないけど。


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by macchi73 | 2016-09-19 23:55 | 【生物】魚・貝など | Comments(2)