2017年 06月 11日
子ども時代は永遠に年をとらないこと
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真夏日だった昨日と違い、今日は曇天で少し過ごしやすい。梅雨入りってもうしたんだっけ?

今年は紫陽花が遅い気がするが、それでも庭の西安も少しずつ色づき始めた。来週末くらいには見頃になるかな。

ノイバラ風のバレリーナが、今年は庭の一角でたくさん花をつけている。
数年前に下手な移植で大株を殺してしまったのだが、その時とっておいた挿木が育ち、やっとここまで育ってくれた。復活して嬉しい。……母の仇、とか思われてたら怖いけどな。
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リビングのテーブルでは、末っ子が学校で飼っている動物の世話の仕方のポスターを作っている。飼育委員で、1年生たちへの説明に使うそうだ。「うーん、毛並みをうまく表現するにはどう色塗りすれば良いかなあ」なんて言いながらのお絵描きが楽しそうなので、私もなんとなく、ソファから見えてる庭をクレヨンで落書き。緑ばっかりでつまらないので、窓にへばりついている末っ子の姿を描き入れた。私にとって見慣れた情景。

そしたら娘が、

−−それ、小さいときのピノ子だね。

−−えっ?


あ、そっか。言われて気づいた。もうこんなに小さくないんだな。

本物は、もうスラッと細長い。
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* * * * * * * * * * * * *

家にあった本を読んでたら、それどんな話?と聞かれた。うーん、山尾悠子って、何回読んでも過度にシンボリックな印象だけしか残らず、実はお母さんもよく分かってないんだよなあ。

で、「えーっと、冬眠者っていう一族についての短編集でさ、冬には冬眠するんだけど、冬眠中は死んだようになって年も取らないんだ……」と、子どもにわかりやすいように適当に要約して伝えてみたら、話しているうちになんとなく一つの像が結ばれて来て、「あれ?もしかしたら面白い話だったかも?」とか初めて思ったりして。

『ラピスラズリ』(山尾悠子)

一話目は【銅版】。
全体のプロローグのような話。
怪しい画廊で店主によって語られる3枚の銅版画、「人形狂いの奥方へのお使い」「冬寝室」「使用人の反乱」と、それから私の記憶にあるもう3枚の絵「痘瘡神」「冬の花火」「幼いラウダーテとその姉」が描写される。それらの絵の正しい並び順ってどうなんだ?という謎が一つ、話を聞いている「私」と、その母って誰なのか?というぼんやりした謎が一つ。


二話目は【閑日】。
とても短いが美しい話。これ一遍だけ独立した短編としても読めると思う。
冬眠者の少女ラウダーテが、冬のさなかに一人目覚めてしまったが閉鎖された館から出られず、そこに棲みつくゴーストと過ごす3日間の物語。銅版画のうち、「冬の花火」とは何かが語られる。


三話目は【竃の秋】。
ページ数的にはこの本のメインとなる中編。不思議な館に棲む、支配階級の冬眠者たちと召使の人間たちの話。

冬には一人寝室に閉じこもり人形と共に眠ってしまう冬眠者の習性、ラウダーテの母である奥方に最近みられる不眠と病気恐怖症の兆候、身ごもったまま冬眠に入ろうとしている姉、冬を越せそうにない病弱な弟トビアス、奇妙な双子のおばたちなど、貴族のようでもあり、冬ごもり前の獣のようでもある冬眠者たちの姿が語られる。銅版画の「冬寝室」「人形狂いの奥方へのお使い」の情景。

それから、冬眠者以外の住民たち−−使用人、ゴースト、森のやつら。

冬眠者の塔に連なる棟に住む使用人たちは、贅沢三昧の冬眠者たちに対し、畏れや反抗心やそれぞれの関心を抱いているようだ。生真面目な召使頭、同じく召使頭だが主たちに対して何か企むところがあるような優男、人形恐怖症の召使、性質は違っても見た目はそっくりのお小姓たち、冬眠者なんて世話してあげなきゃ死んでしまうと侮りもしている女中たち、竃番のアバタの少年、使えない医者。そんな面々が、迷路のような館の中でゴチャゴチャ動き回っている。

館には時々ゴーストが現れて棲みつくことも人々の会話から分かってくる。ゴーストになった者は自分が誰なのかを覚えておらず、それがわかった時にある変身が起こるのだが、どうも今のゴーストについては奥方が何か秘密を握っているらしい。一方ラウダーテは幼い頃に一度だけ体験した冬とゴーストとの交流が忘れられず、新しいゴーストとも交流を試みている。

館の外には広い庭園と温室。そこでは職人気質の園丁たちがひっそり働いているが、彼らは個人主義かつ非社交的で外の人間と交流を持たないため、何人いるかもよくわからない。館の召使頭の幼馴染で、園丁にしては幾らか社交的な一人が館と庭園のパイプとなっている。

庭園の外には柵。周囲の森の中をさすらう「森のやつら」の侵入を防ぐためのものらしい。森の奴らは朽ちた病人とも亡霊ともわからぬ姿をして、何故か館を目指す習性がある。冬眠者たちは森の奴らを恐れ、忌み嫌っている。

そんな冬眠者を中心とする館世界に、奥方に荷物を届けに来た荷運び、負債を告げる借金取りなどの外からの来訪者が加わった時、大勢の登場人物の動きがそれぞれ小さく影響し合って繋がって、館の崩壊につながっていく。そこで語られるのは、銅版画の「使用人の反乱」「痘瘡神」に描かれる場面。「使用人の反乱」の時系列と、それから、えっ痘瘡神ってお前か、というのはちょっと意外で面白かった。


四話目は【トビアス】。
いきなり場面は変わって近未来の日本っぽい話で、ひとりぼっちの冬を過ごすことになった冬眠者の少女のモノローグ。第一話と繋がる話なのかな?(だとしたら、「わたし」は少年の可能性もあり?)
冬を越せなかった飼い犬のトビアス、それから森に姿を消した母。前の3つの短編と、重なりそうで重ならない単語や世界。


五話目は【青金石】。
舞台は中世ヨーロッパ。聖フランチェスコが冬眠者とみられる細工職人の若者と会話を交わしている。前の四つの物語に現れたシンボルたちが次々現れて、冬の花火の最後の秘密が明かされ、全てが繋がりそうに思えるような、そうでもないような、最後の一文へ。



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そうやってまとめてみると、使用人たちは日々の生活、冬眠者は際限なく巡るように見える倦んだ時間、森の奴らは老醜、トビアスや胎児は繰り返す時間の輪に取り込まれる前のぽっかり浮いてる幼年、ゴーストは死と再生の象徴なのかな、なんて思う。

ま、本当は、そんな風に無理やり整合性をつけずに、不思議な世界や場面を絵画のように楽しむ系の物語かもだけど。すっきりする解釈つけたくなっちゃうんだよなあ。


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by macchi73 | 2017-06-11 20:00 | 面白かった本など | Comments(12)
Commented by うり豆 at 2017-06-12 13:14 x
「おばあさん」チェコのお話、ホゥテンシア(あじさい)女性の名前がでてきます、
紫の額紫陽花は茶席に設えるのも素敵、
末っ子って何時までもお母さんの傍に居ましたねぇ、幾つになっても一番チビ助、
女性は本当にファンタジィや幻想物を好む傾向がある様な・・
彼女は渋澤龍彦やキリコ、デェルボーが趣味?なんだとか、
「閑日」は「ムーミン谷の冬」の様じゃありません?
「幼年期の終わり」哲学的な命題、
リリシズムを味わいます。
Commented by africaj at 2017-06-12 16:07
絵、描いてる~。もう描いてないって聞いたから、見ると嬉しくて反応してしまったw
子供って親が見てる姿よりも本当はもっと成長してるんですよね。
悲しんでるかもしれないって心配するときとか、よく考えると幼稚園くらいの顔を思い出してるって気がついたことあります。なんだろ、願望かな。
macchiさんの絵、きれいな色。このblogのイメージそのものですね。

忙しそうなのに、いつ本読んでますか?
私、今没頭してるんですが、時間捻出にしくはく。
だいたい読むの遅いんですが(いい言葉メモったり好きな場面何度も読み返して、書かれてる曲をわざわざYOUTUBE で聞きつつ場面読みなおしたりだからさらに遅いw)
macchiさんもしかして速読とか?w
Commented by macchi73 at 2017-06-12 22:24
> うり豆さん
おおー。それまた、はっきりした趣味ですね。
そういえば、山尾悠子は「夢の遠近法」を最初に読んだのでした。たしか渋澤龍彦が紹介してたのが面白そうに思えて。

で、読んでみたら、確かに好きになりそうな香り満々なのに、何故かそこまでピンと来ず……。構成とか凝ってて、メタな部分は面白いなって思うんですが、中身もきっちり作り事なのがグッとこないのかな。
澁澤龍彦も多少そうなんですよね。あ、でも澁澤訳のバタイユは好きだったし感動したんだ。バタイユは本当に変でかわいそうだなって(←間違った読み方)。

幻想物、好きです!
でもあまりカチッとした硬質な感じの幻想じゃなくて、牧野信一とか、もやっと垢抜けない感じ(失礼)のが、より好きかもです。トーベヤンソンはかなり好きです。ムーミン以外のも。

誰かオススメありますか?
Commented by macchi73 at 2017-06-12 22:33
>africajさん
あ、子どもにクレヨンでチャチャッとお絵描きとかはよくやります。たぶんみんなやってる、お母さんルーチンワークで。

でも、大人になると一人で何か描こうってのはやらなくなるもんだなと。若い頃は、起きたら意味なく、今みた夢とか描いたりもしてたけど。暇だったんですよねえ。

読み書きは速いかも。
でも単に宵っ張りで3時くらいに寝るの普通なんで、0時を過ぎたら自分の時間いっぱいって感じかなー。そして当然、寝坊して遅刻。エブリディ。

さらに最近は諸事情により無理やり早く帰る生活にシフト中なんで、けっこう時間あるのです。仕事の資料も家で読んだり考えたりしてんですけど、活字中毒なだけに、そういうのはそんなに嫌じゃないんですよね。
でも遅刻を改善しないとただの不在がちな怠け者っぽくなってしまうのが、まあ悩ましい……。

私も、子どもが悲しむだろうなって思った時に思い浮かぶ泣き顔、傷ついた時の仕草、思い出すのはいつも小さい頃ですよ。
すごくわかります。
Commented by viora at 2017-06-14 20:23 x
絵がとても上手ですね!
感性が豊かなmattiさんのblogを読むのがいつも楽しみです。
ところで、うちの庭ってちっちゃくて猫の額くらいしかないんですが、ブッシュ系でオススメの薔薇の品種あったら教えてくださーい。
強くて虫がつきにくくてほっといても育つ美しい…
なんて、都合のいい薔薇はないか…(^-^;)
Commented by viora at 2017-06-14 20:28 x
追記
スミマセン
mattiさんではなくmacchiさんの誤りでした!
Commented by macchi73 at 2017-06-15 00:34
ブッシュ系ってことは、自立する樹形ってことですよね。

ブッシュ形にも育てられて、ほっといても育って花が多い……といえば、一つ前の記事のトップ写真のアンジェラはそうですよ。全然世話しなくても、頑丈でモリモリ咲くし、花期もすごく長いです。冬まで咲きます。香りがないのが、ちょっと残念かな。

香りで選ぶなら、ゼフィリーヌドルーアンは丈夫だし、トゲが全く無いので、狭いところでも痛くなくてオススメです。必要な世話は施肥くらい。
でもブッシュ系じゃないな……。壁面やトレリスとかで少し支えてあげれば、枝も柔らかいから、こじんまりも好きな形にも咲かせられると思いますが。

あとは、またまた全然ブッシュじゃないけど、モッコウバラは、施肥すら無しで完全放置でも虫も病気も発生せず、毎年花があふれるように咲いて風情があります。でも、ほっとくとどんどん大きくなるので、壁面いっぱいくらいになっちゃうかも。

あと、最近一番気になってるバラでは、ヒアワサとか、育てたことはないけど、すごく綺麗だなーって思います。植えてみたいなー(←自分が)。でもこれもつるか。

半つるとかつるバラが好きで、ブッシュ詳しくなくてすみません!というか、巷のロザリアンの方々とは違って、私はバラ、特に詳しくないのでした。育てたことがあるものしか分からない……

でも、バラって色も形も香りもすごくバリエーションあるから自分の琴線に触れるものを試しに育てるの、楽しいと思いますよ。
苗屋さんや植物園で見て、「これだ!」って惹かれたらしめたものかも。色々見て、選んでる時が、また楽しいんだ……
Commented by viora at 2017-06-15 13:43 x
とてもとても丁寧なコメントありがとう~
アンジェラ、可愛いですね!名前も!
つる薔薇も心惹かれる品種たくさんあるんだけど、庭も壁面も征服され、薔薇に覆い尽くされたらどうしようとか大袈裟なこと考えてしまって…
その前に育つかどうか考えなくちゃいけないのにね(^-^;)
モッコウバラもいいですね~
macchiさんのお庭のように、いろんな植物増えて庭らしくなって欲しいなぁ…

ありがとうございました♪
Commented by 薪の炎 at 2017-06-17 23:38 x
幾人かの読者の方が絵をお褒めになっていましたが、子供を見守るほんわかした愛情のようなものを私も見た瞬間感じました。というのは以前、貴ブログの娘さんの表紙写真の感想をコメントさせていただきましたが、その返信としてあの写真はmacchiさん自身のお気に入りだとのコメントをいただきました。考えてみると写真と絵の違い、見守る目線の位置の違いはあるものの両方とも子供に対する思い、愛情が全く同じだと感じたのですがいかがでしょう。そうは言うもののこどもをもったことがない私が言っても説得力がないかもしれませんが...........。ところで貴ブログでは本紹介も主テーマの一つですよね。ところが私は読書と言えばせいぜい雑誌のパラパラ読みくらい。なかなか記事へのコメントもできません。子供時代に遡ってもこれといった作品名が思い浮かびません。そんな中、小学生低学年ころ学校の図書館で読んだ「ちいさいおうち」(全部ひらがなだったかどうかは失念)という絵本は物語の内容と絵は今でも結構はっきり覚えています。緑の小さな丘の上に建てられた一軒の小さな家、時が経ち周りにどんどん家が建ち、さらに時が経つと周りはビルだらけ、人間は登場しなかったような気がしますが結局家はそっくり元の景色と同じような場所に移されめでたしめでたしだったかな。単純な物語なのになぜかこの絵本だけは何度も飽きずに読んだものです。今は恥ずかしいくらい読書しなくなってしまいました。macchiさんとしては読者コメントするのであれば紹介本の内容に少しは触れてほしいと思われるのではないでしょえか。触れられないのに私の昔話などをコメントする図々しさお許し願います。それではまた。
Commented by macchi73 at 2017-06-18 11:55
ちいさいおうち、愛着持つ方が多い名作みたいですね。
子どもたちの小学校での読み聞かせの本を選ぶ時、よく名前があがってました。
薪の炎さんのコメントで、興味が湧いたんで読んでみます!
今年も何回か読み聞かせ係にあたってて、図書館に本を選びにいくのでナイスタイミング(今、6年生に何を読むかを考え中)

あと、本や音楽の紹介は、「なんかまたゴチャゴチャ自分の趣味で長文書いてるやー」くらいで……(改めて考えると、多少恥ずかしい)。

好きなものを書いとくと、マイナー分野かな?と思ってても、けっこうコメント欄で「それが好きならコレも」みたいな、聞いたこともないオススメをもらえるのが面白く。自分の周りでは全然でも、やっぱりどこかに好きな人っているんだなーと感心します。
実は本日も昔の記事へのコメントでオススメアルバムを教えてもらい、アルバム買ってみたらかなり良くって嬉しい週末だったり。

あ、あと、昨日は教えてもらった方法でジュース作りましたよ。
水をいっぱいれた鍋で、完熟梅を砂糖と煮てから濾したら、すごく美味しいのができました。ありがとうございました。

ではではー良い週末を!
Commented by mamirin412 at 2017-06-25 08:20
こんにちは♪はじめまして。
以前から時々お邪魔しておりました。このブログの世界観とても好きです。
手作りや自然を大切に丁寧な子育てをされていますね。
私も過ぎた子育ての日々、もっとこんな風に丁寧に子供と接したらよかったなあと、
少し反省をしたりしながら楽しく読ませていただいてます。

この記事を読んでラピスラズリという物語をものすごく読みたくなり、
図書館で予約をして受け取り、一気に読み終わりました。
うーん、難解で一回では心にストンと入ってこない。でもとても好きな類の物語でした。
あと2回くらい読んだらもうちょっと理解できるかも?
山尾悠子さんも知らなかったので、教えていただきありがとうございました。(←これが言いたかった)
突然のコメントで失礼しました。
またブログ楽しみにお邪魔します。
Commented by macchi at 2017-06-26 22:05 x
mamirin412さん、
そうなんですよね、私も山尾悠子はストンと入って来にくくて。
描写があっちからこっちからと細切れ過ぎて、誰が誰やら、何をしてて何を考えてるのかがわからなくなる……。

で、この本も長らく何だか宙ぶらりんな把握でいたのですが、子供に整理しながら話したら、枠組みがクリアに見えてきて、「あれ、すごく作り込まれてて面白いかも?」とか思いました。

それで整理した頭でもう一回読み返してみたら、庭師と召使頭のほんのりした友情やら、竃番の少年のラウダーテへの複雑な気持ちやら、細切れにあちこちに散りばめられた描写から感じられる気がしてきて、山尾悠子を読んで初めて感動のようなものを感じました。

この世界はあまり分かんないなーと思ってた本でも、急に好きになることってあるんですね。ちょっと驚きました。


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