朝、リビングの床にごろんと芋虫みたいに転がっていた。仕事行きたくねー。
そしたら足元から「学校行きたくなーい」と声が聞こえて、見たら娘も転がっていた。
なんとなくため息をついて、そのまま棒のように転がり続けていたら、「でも庭が綺麗だね」と娘が言う。転がっているので、頭上にリビングの掃き出し窓があり、緑色の光が差し込んでいる。黙っていたら、娘がまた、特にお日様に透ける緑って綺麗で好きだなー、ともう一度つぶやく。
それで、アオーン!と狼の遠吠えの真似をしたら、クロックロックロックロッ!と蛙の声で応える娘。幼稚園の頃から続く暗号の一つだ。ふふ。
日に透ける緑を見に、庭のモミジの樹の下に立つ。
そして異変に気付いた。カエデの上、生きたアブラムシが壊滅状態だ。
たまーに葉の裏に一匹二匹ぽつりぽつりと褐色のアブラムシがいるが、それ以外は白金色に光るまんまるのマミーばかりが死屍累々と……。どうやらこのモミジ界隈では、アブラムシより寄生蜂であるアブラバチの方が優勢のようだ。
緑のアブラムシとはだいぶ見た目が違うこのアブラムシは、モミジニタイケアブラムシっていう奴だと思う。翅のあるのと無いのがいて、翅のある方はコバエみたいな雰囲気だ。モミジの上で見られる二つの形態を持つアブラムシだから、紅葉二態毛油虫ということらしい。
ちなみに、二つの形態というのは翅の有無ではない(それなら他のアブラムシもみんな二態ってことになるし)。
ニタイケアブラムシは、夏には越夏型という平べったい形の幼虫で夏眠状態になり、また秋から活動を始めるらしい。暑いのが苦手なのか?と思ったが、まだ展開しきっていない葉の上で生まれると通常の姿になり、展開しきった葉だと越夏型になるという記事があったので、葉の成分で形態の変化が起こされているのかもしれない。
そしたらもうそろそろ、越夏型の幼虫も見られるのかな?
気になって開いたモミジの葉の上をしばらく探してみたが、見つけられず。そろそろ出勤なので時間切れか。
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カエデの樹上では、アブラムシは(マミー以外)あまり見かけなかったが、小さな蟻がせわしなく行き交っているのを沢山見かけた。大きさは2mmくらいかな。かなり小さい。これまで庭で見てきた蟻たちとはちょっと見た目が違う。
ツヤツヤした尖ったハート型のお尻が目立つので、シリアゲアリではないかと疑う。でも、つついてみたが全然お尻を上げなかったから違うかもしれない。
それで気になったのは、餌のようなものを運んでいる個体が多いんだけど……運んでいるそれ、ニタイケアブラムシのマミーを解体したものじゃないか?
アリってアブラムシを保護するもんだと思ってたんだけど、マミーになってしまったアブラムシはバラして食料にするんだろうか。中のアブラバチの幼虫を殺すことで、アブラムシ保護になるっていう意図もあるのかな?
もしこれがシリアゲアリだとすると、蝶の幼虫やツノゼミとも共生してたりするみたいなんだよな。とても巣を探したく思ったけど、出勤時間ももうすっかり過ぎてるので(いつの間に!)、それはまた今度とした。
その身の上で色々楽しいものたちを養っていそうなモミジの木を振り返りつつ、後ろ髪引かれる思いで出勤。
小枝の上では、今まさに孵化したところっぽいテントウムシの幼虫たちも見かけた。
ただでさえ寄生蜂にやられて続々とマミー化されているアブラムシたち、大食漢のテントウムシたちまでやってきて、これから受難が続きそう。
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よーし、この連休はモミジの上を探検だあ!とワクワクしながら仕事をざくざく片付けてたら、緊急ヘルプ!と別部署の同僚が飛び込んできて、週末が吹っ飛ぶ。
あれ、でももうこれ締切だよね、ダメじゃない?と指摘したら、ううん、これは提出先がヨーロッパだから大丈夫なの、あと一日あるの!と言う姿に、不屈の紳士フォッグ卿を見る。おお。ジュール・ヴェルヌ、大好きさ。お伴するさ。
という訳で、今年のゴールデンウィークは、しょっぱなから、なにか世界一周的な。
小さい頃、一番最初に読んだ時は、日付変更線ってのがよく分からなくて、なにそれ、この地上でそんなタイムマシンみたいなことが!?と、ぼんやりした不思議な気持ちが残ったのだった。
その後少ししてから読み返して、「なるほど!」と、やっと納得。
でも、よくわかってなかった時でさえも、とても楽しく読んだ記憶あり。章タイトル面白すぎ。フォッグ卿格好良すぎ。冒険感満々すぎ。