2011年 04月 02日
『魔女がいっぱい』(ロアルド・ダール)
春休みで、「今は外遊びすべき時ではない」と主張する夫と昼間二人きりで過ごす日が続く末っ子。
一日中家の中にいるのに飽き飽きしてエネルギーを持て余している。
私が帰宅するや否や「海賊ごっこしようよ~」「サーカスの新しいのやろうよ~」「ギター教室ごっこだよ〜」と疲れることばかり次々言われてげんなり。
うへー。体力勝負じゃない遊びしようよ……。

と言う事で。
上の子たちが好きだった、『魔女がいっぱい』という本を読み聞かせることにした。
長い話なので、毎日一章ずつお話するようにしたところ、海賊ごっこに疲れたときに「本、続き読もうか?」と言うとすぐに大人しくなるようになった。
それどころか「海賊ごっこは明日しよう。今日は本もう一回読んで」と自ら言い出したり、今日は魔女の絵を描こう!と机に向かったり。ふふ。いいね(ま、体力遊びはゼロにはならない訳だけど)。

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疲れる遊び…


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『魔女がいっぱい』(ロアルド・ダール)



ダールは子ども向けの物語をいっぱい書いているが、どの本にもナンセンスでおかしな感じが溢れていて、子供たちには外れなくウケる。

ただ、ちょっと皮肉やふざけた感じが強い時もあり、「え、感じの悪い登場人物はそんなにコテンパン!?」とか(優しく品行方正な子を好む私としては)微かにきまり悪く感じる時もある。なんて言うか、これは幼児向けハードボイルド?

そんな中で『魔女がいっぱい』は、ハチャメチャ感と読み応えがちょうど良いバランスで一番面白かった。


両親を亡くし、魔女にねずみに変えられてしまった少年と、そのお祖母さんの物語。
機転を効かせて魔女たちをやっつけ一件落着……なんだけど、だからと言って一回ねずみになってしまった者が元に戻ることはないってのが妙に現実的。
そして誰もが知っているように、ねずみとは短命な生き物だ。
「ちょっと聞いてもいい、おばあちゃん?」
「なんでも、好きなこと聞いて、ぼうや。」
「ネズミは、どのくらい生きるの?」
「ああ、ぼうや、おばあちゃんはね、ぼうやがそのことをいつ聞くかしらって待っていたんだよ。」

そんな!と読み手としては悲しくもなるが、お互い先の短い少年とお祖母さんは、これがハッピーエンドと受け止めるところが、ダールっぽくて乾いた感じ。でも実際のところ、この状況では、信頼できる者同士がそんな風に感じることもあるだろう、と思わせる切ない説得力もある。

最後のシーンは、残りの短い人生を、ワクワクする冒険に踏み出す二人の様子で、読後感は爽やか。

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あとは、子ども用じゃないが、ダールの本の中で私が好きなのは自伝。

『少年』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


ダールの子供時代の自伝。メチャクチャ悪童。
ダールの小説の元ネタが、ところどころに散りばめられていて興味深い。

自由と冒険を旨とする家族の間に漂う愛着は、可笑しくって良いもんだなと思う。
自由な子ってこんな感じなんだな、自由な子のお母さんってこうなんだなと、実体験はなくてもスッと納得できる。
爽快で懐かしく、でも何となく胸が痛い感じもある読後感。
ってか、子ども時代の物語って、たいてい読み終わった後は少し寂しくなる。
どんなにいきいき書かれてても、振り返られる時点で、既に失われてるものだからか。

訳者後書き中にある、ダールの14才から17才までの「作文」の成績の抜き書き、あまりに酷評ばかりで感銘を受けたので一行だけ抜粋する。そんな彼が有名な作家になったり女優と結婚したりするなんて、先生たち思いもしなかったろう。どんなに酷く思われてたって、子どもの未来は分からない。
論旨支離滅裂・語彙拙劣・文章構造あやまり多し。彼はわたしにラクダを想起せしめる。

青年時代以降の自伝である『単独飛行』も面白い。
なんでダールの本がこんな感じなのか(おふざけ・皮肉)、ちょっと考えさせられちゃう感じ。
ダールには、この世は戦わなくちゃいけない理不尽で溢れた冒険の場に見えてたのかもしれない。

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ダールは大人向けの小説も書いている。
というか、私は最初大人向けのダールしか知らず、それが子ども作家のダールと同一人物だと認識したのはだいぶ後になってからだった。


『キス・キス (異色作家短編集)』

他の作家目当てで揃えた『異色作家短編集シリーズ』と、有名な『あなたに似た人』をなんとなく持っていたが、どの話も器用だなー上手いなーっていう軽い感じで、何度読んでもオチに来るまで忘れてる。日本で言ったら星新一とか阿刀田高とか、そんな感じの分野かな。

特に感じ入りもしないが読み易いので、手持ち無沙汰な時にそばにあるとチラッと読んじゃったりして、結局なんだか馴染みの本だったりもする。お風呂とかトイレに置いておくとちょうど良さそうな……(行儀悪い)。

ダールは子ども向けの話の方が、何か呼びかけるような感じがあって良いと思う。



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by macchi73 | 2011-04-02 21:02 | 本の感想など | Comments(0)


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